口付けに、愛を07 | ナノ
キスをする。
その瞬間、彼女の睫が微かに震える。一生懸命俺を受け止めようとする。一体その硬く閉じた瞼の下は、どんな瞳をしているのか。

軽く触れて離れると、彼女の瞼がゆっくり開く。その瞳には俺しか映っていなくて、それがたまらなく嬉しい。そんな時、自分の独占欲の強さに苦笑いしてしまう。
彼女は目があった瞬間、頬を染め俯く。ちょっとだけ眉を寄せ、何とも言えない顔をする。前まではそれで精一杯、という顔をしていたのに、何だか余裕が出てきたのか、慣れてきたのか。


「最近、物足りなさそうな顔するよな。」
「えっ、そんなこと…。」
「それとも、俺とキスするのに慣れた?」
「な、慣れるわけないよ!今だってこんなに、ドキドキしてる。」
「俺だって、ドキドキしてるよ。」


「…でも、それ以上にもっとキスしたい。」

駄目?と聞いたら、真っ赤な顔をして“ズルイ…”と言われた。
馬鹿、そんな顔したら止まんなくなる。

「お前の方が、ずるいよ。」

彼女の瞳を見つめたまま、キスをした。
(いつも閉じていた瞼の下は、こんなにも色めいていたのか。)
その瞳に映る俺は、もう幼馴染の男の顔じゃなかった。


長くなるキスに、彼女がそっと瞳を閉じた。
睫が微かに震える。
それが合図のように、深く深く

キスをした。