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彼女と結婚して、もう2年になる。
互いに忙しく2人で過ごす時間は、限りなく少ない。
それでも幸せだった。家に帰れば、彼女がいて『おかえりなさい』と言ってくれる。

互いに支え合い、互いを必要とし、そこには確かに愛があった。
キスをして、彼女に触れ、愛を囁く。その時間があれば、何だって乗り越えられた。
これからも、そうだと信じていた。


会えない日々が続いていた。
ベストセラー小説の映画化の主演に抜擢され、かれこれ自宅には3ヶ月帰って居ない。元来2人ともマメに連絡をとる方ではなかった。特に彼女は作曲に夢中になると、連絡がつかないことがざらにあった。それは昔から変わらず、忙しい時は必要最低限しか連絡を取らなかった。彼女は家にいてくれる、そのことに自惚れていた。


原作は、恋愛ものだった。こういう役をやる時、相手役を彼女に重ね合わせ、気持ちを掴むことはよくあった。今回もそうだ。愛しみ、慈しみ、求める気持ちはいつだって彼女へ。だから、役にはいれば入り込むほど不思議と淋しさはなかった。

クランクアップしたら、1ヶ月ほど休暇をもらっている。
久しぶりに春歌と2人で、旅行でもしようと思っていた。ゆっくり2人で過ごすのをひそかに楽しみにしていた。


彼女の笑顔が、待ち遠しかった。

クランクアップを迎え、大きな花束を抱え滞在先のホテルに帰った。気分が高揚していた。珍しく、胸に熱いものが込み上げた。彼女と分かち合いたいと思った。
携帯を手に取ると、着信が何件か入っていた。

「…春歌?」

リダイヤルをし、数秒の呼び出し音。出たのは彼女ではなく音也だった。
慌てて言われた言葉に、時が止まった気がした。

脳裏に彼女の笑顔が浮かんで、消えた。



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