京マサ
2013/03/15 23:46




狩屋、と練習中低い声で呼ばれたかと思えば、すぐ後ろには剣城くん。


「…どうしたの剣城くん」


そう言って振り向いてみたはものの、剣城くんは背が高いから、少し見上げる形になってしまう。


同じユニフォームを着ているはずなのに、彼だけすらりとした立ち姿。

女子のファンも多いし、何よりサッカーも上手い、そんなほぼ完璧な彼。


比べ始めたらキリがなくて悔しいから、できればこうやって並んで立ちたくはない相手ではあった。


「襟、中途半端になってるぞ」

「へ?…あ、本当だ」


いつもはぺたんと寝かせたままのユニフォームの襟が、中途半端に立っていた。

ユニフォームは真面目すぎるくらいの着こなしを基本としている俺にとっては、ちょっと恥ずかしい。

急いで直そうとしたけれど、それより先に剣城くんがスッと直してくれた。

それに小さくありがとう、とだけ返す。


剣城くんとよく話すようになったのは、ごくごく最近のことだ。

無口で冷たい印象だったけど、どうやらそれは誤認で、彼は想像以上に世話焼きな人らしい。

今では、しょっちゅうこうして俺の世話を焼いてくる。

ここに天馬くんや信介くんが加わると、一見お母さんのようになるのも、もう慣れっこだ。


「…剣城くんってお節介焼きだね」

「てっきり、お前が似合わないくせに、無理に襟立てようとしてるのかと思って」

「じ、自分だって立ててるくせに…!」

「俺は似合ってるからな」

「うわっ、カッコつけー!」


こんな冗談が言えることも、つい最近知ったことだ。

冗談を言った後の少しはにかんだような笑顔も、まだ知ったばかり。


俺がぼーっとしていると、練習戻るぞ、と軽く腕を引かれた。

相変わらず俺への扱いは、子供へのそれそのものだ。


「…わかってるよ」


少しふて腐れたような返事をして、彼についていく。


細身だけど、俺よりはしっかりした背中。

少し前までは、ただ高く、遠くに見えるだけだったその後ろ姿が。

今では少し、本当に少しだけ近づいた気がして、嬉しかった。



ほら、届いちゃうよ。



(もっと構ってくれてもいいんだけど?)



_____
狩屋はなんだかんだで剣城に憧れている部分があると思います

クールな剣城を見てるだけでもいいんだけど、だんだん距離が近づいて内心すっごい嬉しがってるとかね

もちろん素直になんてなりませんけど、ってところが好きです

剣城も狩屋にはちょっと贔屓すると思うんですよ、下心があるかないかはご想像にお任せして…




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