仲間



 魔法薬学の授業は、ポッター筆頭のグリフィンドール連中にいい印象を抱かせるという目的を十二分に達成して終了した。ロングボトムといったか、入学前にボートで一緒になったおっとりした少年の調合ミスを、杖を振って正しい手順を踏ませることで回避し、さらに十点稼いだ。これは計算外だったが、視えていない割にはよくやったと思う。

 そのほかにも、スネイプに「完璧な調合だ」と世辞なしで褒められたので、お礼と言ってはなんだが、我が家の書物を読ませてやろうと思う。あれは社交辞令だったし、相手にもそれは伝わっていたと思うけれど、それはそれで意趣返しができて楽しい。ミケの存在を邪険にした恨みに、人間には絶対に読めない言語で書かれている本を貸すのだ。もっとも、読めれば妖精の地位が落ちるので、学習できないように細工するが。

「カルラ、よくやった」

 ――先ほどの出来事を振り返っていると、ザビニに声をかけられた。
 ファーストネームで呼ばれたということは、彼の仲間として認識されたということだろう。まあ、これは想定内のことなので感慨深くもなんともないのだが。
 だってザビニは頭がいい。ドラコのように私がただ庇ったと思っていないことくらい、容易に想像できる。

 彼は、仲間だと思った人間に対しても信頼はしないし、心に入ることも許さない。
 それは己の母親の、「結婚と離婚を繰り返し、相手を死亡させて富を築いた」という外道のような行動が要因なのだろう。不慮の事故で死んだ可能性だってあるだろうが、私がむかし視た未来では、明らかに他殺だった。
 ……過去の私は、それを視てもなんとも思わなかった。何の感情も抱かず、ただ有象無象として受け取った。
 しかし自分を仲間として認識されてしまっては、多少良心が痛むし、罪悪感も沸くというものだ。まあ、あくまでも“多少”なのだが。

 そんなことを考えながらも応対はそつなくこなす。怪しまれては仲間認識を改められかねない。

「ああ、ザビニ。お褒めいただき恐悦至極、なんてね」

 彼を名前では呼ばない。彼がいいと言うまでは、彼の名は彼だけのものだ。

「……お前は、ちゃんと弁えてるんだな」
「当然だ。他人との距離感を図れなくては、今頃勘当されている」
「ふはっ、お前の家どうなってんだよ」

 どうもこうも、チェンジリングたる私の本当と本質は人間のため、妖精や生物、精霊や小人に対する敬意は最大限に持っておかないと命の危険があるのだ。勘当というのは、この世からの勘当だ。
 その旨を伝えるわけにはいかないので、笑ってごまかす。それを察した彼は次の話題へと移った。

「さて、次の木曜日は、カルラの言った通りならグリフィンドールとの合同飛行訓練だが……首尾はどうだ? まさか不調だなんて言わないよな?」
「ふふ、そんなことがあるわけないだろう? 両親から箒を送ってもらうつもりだ。父の作る箒はニワトコ製だからな、どんな箒よりも速い自信がある。……一応言っておくが、どれだけグリフィンドールに自慢したくても絶対にするなよ。もし盗まれでもしたら、ホグワーツが跡形もなく歴史から消えるぞ」
 
 脅しなどではない。妖精王の特権を最大限、制限をかいくぐって使用すれば、たかが人間の世界の一部など、たかが一千年の歴史など、跡形もなく消し去れる。
 私が本気だと悟ったのか、彼らはこくこくと頷いた。

「まあ、すべて私にお任せあれ、ということさ。……ああ、ドラコ。グリフィンドールをからかうことはしないでくれよ? 私の計算が狂ってしまう」
「ぐ……わかった。努力する」

 あまり期待しないでおこう。私たちは子供なのだから。
 私とて子供だ。たとえ大往生したことがあるとしても。


【 10/13 】

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