男達に囲まれて大人しく前に進む伊智の右腕を、パシッと掴んだ。


「待てよ…」
「伊智、どうしてヨ!?」


俺たちの問いかけに、伊智は振り向かずに答えた。


「…バカですから」


それだけ呟いた伊智は俺の手を振り払って、静かに家を出た。
ドサッと膝から崩れ落ちて俺の特等席の机に体を預ける。
神楽が泣きそうになりながら俺の元に駆け寄ってきた。

「銀ちゃん…!!」
「神楽……っ」
「どうしよう、銀ちゃん…伊智がっ」
「…………ははっ」
「銀ちゃん…っ!!!」
「俺ァ好きな女の一人も護れねーで………何やってんだ」

首元に抱きついてきた神楽の頭を撫でた。
でもその手は震えていて、神楽の頭が震えてんのか俺の体が震えてんのか…分かんなかった。

「嫌ヨっ…伊智助けにいこうヨ!!」
「………ああ」
「銀ちゃんしっかりしてヨ!!!!」

肩を揺さぶられる感覚も、もう分かんなくなってきた。
じわじわと闇に光が差してくる。
ああ、もう朝か。

…あれおかしーぞオイ


「朝んなったら、伊智がいつも静かに家来るじゃねーか」
「銀ちゃ…」
「家から持ってきた野菜とか色々使ってよォ、昔と比べられねーくらいうめー飯作って」
「っ…うう」
「…新八きて、俺ら起こしにきて……眠いけど目ェ覚ましてよォっ……」
「ぐ…ずっ……うう」
「朝一番の炊き立ての米……っ…なんでうめーんだろ、って……思いながら…食ってさァっ…!!」

ガララッ

「銀さんっ!伊智さんが!」
「ど、どうしたの二人ともっ!!」

新八と妙の声で、涙腺が一気にゆるんだ気がした。
右手で顔を覆って、ワンワン泣きわめく神楽を抱きしめながら、涙が今すぐ止まってくれと願った。

「伊智………っ…に、げっ…逃げるなよ…っ!!!!」
「伊智っ…!!ううぅ!」
「神楽ちゃん、銀さん!!?」
「ど、どうしよう新ちゃん……っ。伊智ちゃん、もう…」
「そんなっ…遅かったんだ…!!!」





誰でもいいから俺の心落ち着かせてくんねーかなぁ…っ


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