新八くんはどうやらお通ちゃんのライブに向かったようだ。 座机の中央にある皿からお饅頭を一つとって、口に含んだ。おいしい。 「それでどうしたのかしら?」 「突然押しかけるようなことしちゃって、ごめんなさい」 「ううん。暇だったから、全然いいのよ」 あんなに憎々しかったお妙さんも、今は私のお友達の一人になっている。 時たまこうして家に訪れ、お話をすることも増えてきた。 だけど今日は世間話をしに来たわけじゃない。頼みごとを、しにきたのだ。 「……ラブレター」 「え?」 「ラブレターの作り方教えてください」 「ラブレター…??」 「ええ。銀時さまにお書きしたいのです」 「けど私作った事なんかないわよ?」 「私が間違った事を書こうとしていたら、止めてくれればいいんです」 「…そう」 それだけ伝えると、お妙さんは万年筆と便箋を持ってきてくれた。 震えそうになる手を押さえながら、ジワリとしみこませるように名前を書く。 坂田銀時様 「…愛することは簡単なのに」 「え?」 「愛していると伝えることは簡単なのに、」 「ええ」 「お互いの愛は繋がり難いものですね」 「……そういうものじゃないのかしら」 「…だから、いいんでしょうね」 「そうよ。もどかしくって、でもどこか懐かしい感覚がする。…人ってみんな、そう思いながら誰かを求めてるの」 「私は銀時さまを愛することが…できたかな」 「できたわ……きっと、あの天パにも思いは伝わっているはずよ」 「…ありがとうお妙さん」 最後の文末に。をつけた。 半分に折って、青い封筒に入れてそれをお妙さんに差し出す。 「!」 「……これを、明後日の朝。万事屋に渡しにいってください」 「本当にその手紙…渡す気なの?」 「ええ。それじゃあ、私はこれで…」 「……伊智ちゃん」 それはラブレターなんかじゃないわ。 ………別れの挨拶じゃない。 111226 短めでごめんなさい これやりたかっただけなんです [←] [→] back |