苦労人とはまさにこういう人の事を言うのだろう。
直接本人が迷惑をかけたわけではないけど、間接的にかかわっていて結果その人が一番被害を受けるタイプ。
そんな人と私は出会った。


「へえ、マヨネーズ」


さすがに名前を出すのは可哀想だから、彼が好物だというマヨネーズの「M」からとって、ドMと呼ぼうと思う。
大江戸ストアでマヨネーズを2箱買いしている人がいて、思わず私が声をかけたのがきっかけだった。
マヨネーズ2箱なんて何年分を摂取しようとしているのかな、ドMさんって。


「ここ最近仕事に疲れが来たし一度頭ン中リセットしようと思ってな」
「確かにあなたの頭の中ってぐちゃぐちゃしてそうですよね」
「え?」
「え?」
「あ、いや…ゴホン。まあそんな訳で部下に頼んだんだがサボりやがって、あいつ。仕方なく俺が買いにきた」
「へェ…そうなんですか。何かにトッピングするときって役立ちますよねマヨネーズ」
「いやどう考えても単体だろ」
「は?」
「は?」
「あ、いえ……単体って…その…」

そっとマヨネーズを指さして顔をのぞいたら、少し照れるように小さく頷いた。
嘘でしょ…

「こんな高カロリーのものを摂取していて、そんなにスタイルいいんですか…!?」
「毎朝剣の稽古をしているからじゃねぇか?」
「剣の稽古…あ、やっぱり真選組のお方なんですね」
「今更かよっ」
「え?」
「え?」
「もうこのくだりやめませんか、いくらネタがつきたからって…」
「あ、あぁ…ゴホン」
「あ、そうだ」
「あ?」
「今度素敵なマヨネーズ料理、教えてくれますか?」
「いや、かまわねェが…」
「楽しみにしていますね」
「…あぁ」

フッと顔をそむけたMさんに、クスクスと笑ってしまった。

「お侍さん、それじゃあこれからも江戸の平和を守ってくださいね」
「あ」

パシッ

立ち上がったら、腕を掴まれた。
私もMさんも驚いた顔してお互いを見る。


「あの…」
「…いや、なんでもねェ。わりィな」
「いっいえ」

そっと腕を離してもらって、なんだか気まずい空気になる。

「あの…土方さん」
「あ?」
「沖田さんに、またよろしくお伝えください。」
「お前…総悟の知り合いか」
「ええ。彼みたいな人は、街で結構会えるので」
「確かにその通りだ。あいつァ仕事する気がしねー」
「ふふっ…私は今、元気でやっている…と伝えてください」
「あ、おい…」

それだけ伝えて私は頭を下げ、Mさんの呼ぶ声に振り向かずに家へ帰った。


111226
世間はもうクリスマスでしたね
私はリア充なのか非リアなのか分からない過ごし方でした
あけましておめでとう


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