「ちょっとそこのあなた」


伊智は自分の家にある食材や生活用品の補充のためにスーパーに来ていた。
納豆売り場でウロウロしていると、突然誰かに話しかけられ伊智は振り返った。



「はい?」

「最近、銀さんに付き纏ってる子よね」

「銀さん…?銀時さまの事ですか」

「やだなあに銀時さまって。気持ち悪!気持ち悪!」

「あの、あなたの頭が納豆だらけで気持ち悪いんですけど…」

「って言いながら自分がつけてるんじゃないの!?何なの!?悪いけどSMプレイは銀さんとしか受け付けてないの!私は常にG菌を求めているのよ!」

「は、はあ…?…うわくっさ。納豆くさっ」

「だからあなたがつけてるんでしょ!!」

「あの、もう帰っていいですか?お腹すいたんで」

「ちょっと待ちなさいよ!」


女の人の声を無視して、スタスタと後を去った。


あの人の名前は猿飛あやめ。みんなからはさっちゃんと呼ばれている。
銀時さまの近くを常に監視するプロのストーカー。その理由は、元お庭番衆に務めていたくの一だから。
生粋のドMで、ドSな銀時さまに見惚れていつも付き纏っているけど本人には相手にされていない。
私が相手にするほどの人でもないよね、うん。
ちなみにこれが初対面だったけど、なんでこんなに知っているのかは秘密。
銀時さまの周りの女については、この前怒られてからちゃんと調べたよ!
もう怒らせたくないんだもん……。
銀時さまは女の人と関係がたくさんあるけど、あの月詠と新八くんのお姉さまさえ省けば特に誰も害を及ぼす人はいない。
銀時さまに女の人なんていらないよ。兎姫さまでも、許せないんだもん。
私の知らない女の人とこれ以上銀時さまが絡むのなら、私が知って行けばいい事。
私、ちゃんと学習したでしょ?



家について、ポストを覗き込んだ。




「………」




真っ赤な封筒の中身を確認して、ぐちゃぐちゃにして家の外に投げ捨てた。




「………絶対もどらない」




紙切れの先で切れた人差し指を口に含んで、誰もいない家で一人呟いた。


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