ツッキーが万事屋で大暴れし、お登勢がやってきたりなど軽い珍事件が起きた翌日。
この日も伊智の風邪が治る様子はなかった。
「あれ、俺何でこの子の看病してんだろ」と途中で思い始めるほど、ずっとそばにいた銀時。
そんな銀時もお昼前の今はソファで横になって爆睡中。
新八は新しいタオルを持って寝室に入った。


「伊智さん、早く元気になってください」

「こーんにちーは。銀時くんあーそーぼ」

「なんだヅラかヨ。銀ちゃんならおねんねしてるアル」

「リーダーか、いや実は銀時に用があるわけではないのだ」

「いやアンタ今銀時くんあーそーぼって言いましたよね。言ってること全然違いますよ」

「お邪魔します、と」


ヅラはエリザベスを連れて勝手に万事屋にあがった。
しかしそれは今に始まったことではないから、神楽も新八も気にせず居間に戻った。



「伊智がここにいると聞いたのだが」

「伊智さんですか?」

「今おねんねしてるアル」

「あ、伊智−元気にしていたかー」


デレッとした顔で勝手に寝室の襖を開けたヅラに、新八からツッコミというなの体裁がくらった。
ヅラは気にする様子もなく、苦しそうに咳をする伊智の右手をギュッと握りしめた。



「伊智ちゃーん。5年やそこらぶりだな。うぬ。いやしかし、すっかり美人になったな」

「桂さん、お知り合いですか?」

「攘夷戦争時代に伊智がよく、おにぎりを持ってきてくれたんだ」

「へぇ、そうなんですか」

「ごほっごほ……」

「む、どうした伊智。咳か?咳はな、今までのあらゆる悪事を全て追い払うかのように……グハアアッゲホッウエッホガフバアアアッ………ハァ……ハァ…このような感じで、やるものだガフッ」

「いやあんたが無理やり咳してどうすんだよ!!ほらァ無理にするから口から血が出てるじゃないですか!!!」

「それじゃあヅラ菌が伊智にうつってしまうヨ。さっさとマスクするヨロシ」

「…ん……あ、なたは…」

「目が覚めたか伊智。お前の恋人の桂小太郎だ」

「何さり気に嘘ついてんだァァ!」

「銀ちゃんがなー、つきっきりで看病してくれたヨ。完全に治ったら感謝するネ」

「う…ん。みんなも、ありがとう…」

「伊智、つもる話がある。…ちょっと二人ともは席を外していてくれないか」



珍しく真剣な様子の桂に、二人は仕方なく寝室から出た。
それと同時に銀時が目を覚まし、大きく背伸びをした。




「……久方ぶりだな伊智。お前…飯は食っているのか?昔とあまり変わらぬぞ」

「大丈夫です…。えっと、あなたは…ヅラさまですよね」

「ヅラさまじゃない、桂さまだ。もしくは桂たまでも可」

「桂たま…。お話し、とは?」

「あァ。………お主にお願いをしに来た」

「?」




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