「銀さん…」 「あー」 「落ち着いたかしら…」 「そういや、何でここにいんだオメー?」 ソファに腰かけて上を見ていたら、妙が着物から一つの封筒を渡してきた。 「んだこれ?」 「…一昨日、伊智さんから。…今日の朝渡しに来てくれ、って」 「「!!」」 「伊智が来たアルか!?」 「一昨日よ、神楽ちゃん…」 「……」 「銀さん宛てだけど、みんなにも読んでほしいって言われたから…先に新ちゃんに読ませておいたわ」 「…銀さん。僕、僕…」 「それ以上何も言うな新八ィ。…ありがとよ、お妙。アイツの友達になってくれて」 「!私、は…当然のことをしたまでよ…」 「読むアル銀ちゃん。早く、早く…」 「ああ…」 拝啓 坂田銀時様 この手紙を読んでいる今頃は、あなたはこの世にはもういないのでしょうか。 それとも、私があなたの傍にいないのでしょうか。 時の流れというのはなんて早いものなんでしょう。 誰もそれを止める術を知らない。だからこそ、先を見据えて行動しろ…と、いつも私はお父様とお母様に言われ続けました。 でも、先なんてどこにあるのでしょう?人に未来を読めることはありません。 そう…私には、先が見えませんでした。見えなかったから…あんなことになってしまった。 あんなことになってしまったから、こんなことになってしまった。 まるでどこかの歌手が歌う滑稽な歌詞みたい。 半年前ですね、2度目の再会を果たしたのは。 かぶき町に来てから1年間…あなたを捜す事に一生懸命になっていました。 でも本当は、知っていたんです。気付いていたんです。 あなたが万事屋を経営していたことも、坂田銀時という名であることも、全て村から教わりました。 何故村から出てはいけない村人が、町に出たか…。 私は生贄以前、用心棒を務めていました。用心棒といっても、村人の罰を受け持ったりするだけですが…。 現村長のお方の命で、私は白夜叉を殺すよう言われました。 何故彼なのか…そう葛藤する日もありました。 なんとか、殺しちゃいけない…そう思い1年間を過ごせましたが…。 時間は限界でした。殺しの催促の手紙が、来るようになったのです。 生贄である私は、神御越しに出なければならない。それまでに白夜叉の件は片付けなければいけない。…どちらも嫌でした。 だから私は、村から逃げた。村の命を護らなかったんです。 神御越しの日になっても帰って来ない私に、ついに村人たちは怒りをあげました。 殺すか死ぬか、どちらかにしろ……そういわれたのです。 悩んで悩んで、ついに決めました。 私は死にます。1000万円、慰謝料として差し上げます。 私の依頼はこれで終了しました。貴方たちと短い時間ながらも、共に過ごせた…。愛していた白夜叉さまの、傍にいれた…。 半年間お疲れ様でした。新八くん、神楽ちゃん、銀時さま。 銀時さまのこと、ずっと愛しているから。 地獄から這い上がることはできなかったけど、地獄の底からあなたを愛することはきっとできます。 だから、今までありがとう。 さようなら。 柴田伊智 「…………」 「……っ」 「銀さん…」 「……銀さん、あなたやっぱり…」 「ああ。…こりゃ本人に直接聞かねーとな」 俺は手紙をグシャグシャにして立ち上がった。 「結局言いたいことがなんなのか、よくわかんねー…って」 たくさんの羅列した字が並ぶ紙の裏。 その言葉だけで十分だ。 俺はお前を、今度こそ護り通す。 「行くぞ。新八、神楽」 「「おう」」 ―助けに来て、ください。 111227 まあ解説というか補足というか。 ナシガ村で事件が起き、兎姫は死ぬ ↓ 銀時ら戦争のため拠点を変える ↓ 戦争が終了した頃、再会するも銀時は伊智を見放す ↓ お登勢と会う ↓ 万事屋として伊智と再会 ↓ 伊智村へ帰る←いまここ 4話か5話くらいで、伊智が銀時の「地獄から這い上がってこい」という言葉を忘れていない場面が出てきます。 銀時自身は見放した事を負い目に感じているのですが、伊智はあの事のお蔭で村に再び戻り、そのおかげで坂田銀時と再会することになった。 ん?ん?ってなりますよね。私もです。 そもそも伊智が逃げ出そうとしたのは、そして謎の体温上昇ってとこもまあ後々話に出すとしましょう。 それと前の話で登場した兎姫。あれ?こいつ死んでるよね?っていうのも、後々わかると思います。 長らく話してごめんなさい。とっとの文才ではなかなか伝えにくいものですわ。 [←] [→] back |