実は店長を任せられたという話は全くの嘘らしくて、親方が事故にあって入院し店に出られず、急遽バイトだったマダオが店を任されたらしい。
頼みの寿司マシーンは動きを見せないらしく、しょうがなく自分が作ることのできるカッパ巻きだけを店に出すことにしたらしい。
…いやカッパ巻きってなかなか技術いりますけど。

とりあえず寿司マシーンの修理を試みるため、からくりのたまが故障原因を探り修理することになった。
だがしかし、

「甘ったれてんじゃないわよォォォ!!負けんなァ!!強くなりなァァ!!東京に…自分に負けんなァァ!!」

ガンッ

「………手は尽くしましたが修復不可能のようです」
「完全にお前が壊したよね今!!とどめさしたよね!」

ていうか東京って…どこ?
グダグダになってマダオも焦りを見せた時、タイミングよくお客さんが入ってきた。
仕方がなくお登勢さんとキャサリンさんは接客に回ることになって、その他の私達はお寿司を作る担当になり裏に向かった。

「あ、あの」
「ん?」
「私かぶき町に来たばかりの頃…お寿司屋さんでもアルバイトしていたことがあったんで、少しは握り方わかるんですけど…」
「おおそりゃいい話だ!今も握れるかい?」

マダオの問いかけにこくんと頷いた。

「だけど問題があって…やっぱり一人でお寿司屋さんは経営できません。私はただのバイトでしたし、普通より見た目がいいってだけで味も保障できません。私一人ではできないのでやっぱり誰かにも手伝ってもらわないと…」
「わかった!とりあえず伊智ちゃんはこの材料で注文きたものを作ってくれ!」
「はい!」
「他のみんなには手本を見せよう」

私はそこからもくもくとお寿司を握り始めた。
お妙さんの作ったお寿司がいつの間にかダークマターになっていたり、銀時さまの作ったお寿司がいつの間にかパフェになっていたり、神楽ちゃんのお寿司は完璧なのに並大抵よりでかいものだったり、やっぱりこのメンバーではうまくいかなかった。

「お"え"え"え"え"え"うぶェェェェ!!」

ボトト

「ハァ…ハァ…できました…」
「食えるかァァァァ!!」
「まあ、すごくおいしそうな海老じゃないですか!」

カチャン

「ああああああ!!伊智ちゃんん!?何勝手に回してんの!」
「いや、おいしそうだったし」
「そういう問題じゃないから!」
「じゃあぬるぬるだから?」
「適当なこと言うな!!!」
「でも…」

しかしたまの吐いた(いや、作った?)海老は絶品とお客さんに好評だったらしく次々と注文がやってきた。
私が作り、たまが吐いて、他の皆は雑用をこなして。
そんな時、ついに材料が尽きてしまった。

「これじゃあ私も何もできません…」
「いけよ」
「!!銀さん…」
「ここは俺達に任せて、テメーは今すぐ材料とってこいよ。安心しな」
「…おうよ!ありがとう銀さん!この借りはいつか必ず返すぜェェ!!」

ダッと店から出て行ったマダオを見て、私は手を洗った。

「カレイの縁側…?んだよ誰だよそんなマニアックな寿司頼みやがった奴。もはや寿司じゃねーよ築地いってこいよ」
「そ、そんなこと言ってないで早くなんとかしないと!」
「そうねェ…あっこれなんかどうかしら」

そうやってお妙さんが持ってきたのはレトルトカレー。

「「「「…ああ、なるほど」」」」

そうして、縁側のカレーを店に出した。よしよしこれで大丈夫。
だけどお客さんはなかなか縁側のカレーを受け取ってくれない。

「あ、名前がわかんないのかも。ちょっと変えましょうか?」
「そうだなー…んじゃこれで」

カレーが縁側に

「…いやそれ、もっと離れてませんか」
「んなこたねーよメガネだから目が悪いだけだろ」
「メガネばかにしてんなよ!!?」
「やっぱりダメみたい…まだ取ってくれないわ」
「正直に書いちゃえヨ!」

カレーの縁側

「……あれぇ、また戻ってきた」
「ったくめんどくせー奴だなおい」

カレー早くとれやバカ

「誰がバカだコノヤロォォォー!!」


遠くで誰かの声がした。


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