白いタキシードに前髪をオールバックで固めた銀時さまが、ポケットに手を突っ込んでゆっくりと歩いてきた。
左には煙を上げる傘を手にした神楽ちゃんと、親衛隊の格好をした新八くん。


「き、貴様誰だ!?」

「どうもー新郎候補の坂田銀時ですぅ」

「坂田銀時!?」

「さ、さっきの天パ!お前らあいつを捕まえろ!伊智はこっちへ!」

「きゃっ」


ズシャァァァ


「妻は引き受けたぞ銀時」

「ああ、頼んだわ」

「かっ桂……たま」

「伊智、こっちに来い」


桂たまに抱きかかえられて私達は会場から出た。
未だに頭の中が混乱している。
出る前に後ろを振り返ったら、その姿には似合わない木刀を手に提げて悠々と歩く銀時さまが見えた。

「ケガはないか?」

「は、はい…」

「びっくりしたぞ。テレビでターミナルが中継されていてな、丁度いろいろなドレスに着替えている伊智が映っていたら銀時が血相変えて飛び出したんだ。関係者以外立ち入り禁止って事だから仕方なくこうして変装したのだが」

「…………」

「どうした?」

「い、いえ―何でも……」


そしてようやく、爆音や悲鳴で騒々しかった会場が静かになった。
数秒後にせっかくしてきた正装に傷をつけながら、いつもの気だるげな顔で出てきた銀時さまと神楽ちゃん、新八くんが出てきた。


「ハ、ハタ皇子は…っ」

「あー?別に何もしてねェよ。俺らがやったのは向かってきた警備員だけ」

「今すぐ帰ろう銀時。これ以上いると騒ぎが広まって真選組が来てしまう」

「んあ、そうだな。あー…神楽、新八。先帰っててくれ。ヅラはどっかいけ」

「「ういーす」」

「エリザベスはどこへいった?おうい、エリザベスー」


3人がのろのろと帰って行くのを、銀時さまはずっと見ていた。
どうしたんだろう。助けに来てくれたのに……少し怒っている。
ぎゅっと白の手袋を着けた手を握りしめた。
私の視線に気が付いたように、チラリと銀時さまが私を見る。


「………」

「………」

「…はぁ」

「っ…ご、…」

「ご?何?」

「ごめ…ん、なさい…」

「何が?」

「え?」

「何に、ごめんなさい?誰に?何をして?」

「銀時さまに…っあの時、ちゃんと助けてもらえばよかったのに…やめて、なんて言って…」

「………いや別にさァ。それに関しては俺も注意が足りなかったからさァ。いーんだけどね」


銀時さまは木刀をタキシードの下に隠れるベルトの中に挟むと、右手の中指で額を思い切り弾いた。いわゆるデコピンだ。


「いたっ」

「なんで結婚式にノリノリなんだよ。バカ。おめーは俺が好きなんじゃねェのかって」

「す、好きですよ…。好きだけど…」

「だけどなんだよ」

「銀時さまは絶対に迎えに来てくれるって。助けに、来てくれるって…分かったから」

「……あー…もう。なんでそうな訳!?」

「わっ」


いきなり後頭部を寄せられて自然と銀時さまの胸元に頬を合わせた。
左手は相変わらずポケットに突っこんだまま、でも右手は私の肩に回っていて…心臓の動悸が激しくなる感覚を感じ取った。


「いつも俺を頼って…俺に縋り付いて……」

「銀時さま?」

「なんでもねーよ…。はぁ」

「………あの」

「わりィ。もーちょっと、このまま」


トクン、トクン。
銀時さまの心臓が穏やかに動いている音がする。
私の手元は行先を見失って、銀時さまの腰元に回るか回らないかで宙を舞っている。



「………よし。そろそろ帰るか」

「は…はい」

「伊智」



銀時さまが私から離れて、微笑みながら手を差し伸べてくれた。






これは夢?



20111214
皇子の話し方わかんねー


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