「白夜叉ってーのは………んんっ…」

「…は、はい」

「俺の、ことだ」

「…………え???」

「だから、俺の名前は坂田銀時って言って、攘夷戦争の時は白夜叉って呼ばれて…」

「「うおう!」」

「っ…………!!」

「な、な、ちょ!おい!」


伊智は銀時の上に乗りかかり、銀時を思い切り抱きしめていた。


「白夜叉さま!白夜叉さまー!Vv」

「うっっるせええよ!そしてこの豊満な胸をどけろ!今すぐ俺から離れて!」

「銀さん言葉と表情が矛盾してます」

「マジキモイアル。しばらく私に話しかけないで」

銀時は顔を緩ませ鼻血を出しかけながらも、理性と闘うように胸を押し返した。
銀時の力に負けた伊智はしぶしぶと彼から退いて向かいのソファに再び座った。


「白夜叉さま!私です!あなたを探してました!」

「あ、あぁ…いや…僕あなたの事知りません」

「え?覚えてないですか?ほら、梅娘です!」

「おいしそうな名前アルなぁ」

「梅…娘……ダメだ、記憶を探っても過去に観た梅乳首ってAVしか思い出せない」

「あんたさり気なく何言ってんだ!最低だよ!」

「変なAVに手出すなヨ。どうせなら"びーちく王に俺はなる"とかの方がいいアル」

「アンタら客人の前でよくそんな話できるな!!」

「いや私的にはイチモツモンスター略してイチモツゲットだぜの方が素敵だったと思います」

「アンタも加わるのかよ!!!しかもそれ略してねーし!最低なモンスターゲットしちゃってるし!!」

「あっ…そ、そうじゃなくて!おにぎりの具がいつも梅しかなかった、あの娘です!覚えてませんか?ナシガ村の!」

「ナシガ村…梅………うーん……」

「「「……」」」


頭を抱える銀時を、3人は黙って見つめた。
今までに起きた出来事を全て振り返ってみるが、伊智に似た女と関わった記憶はない。


「……悪い。…思い出せない」

「そうですか。まぁ、いいです。何年も前の話ですからね」

「伊智、だけどお前の依頼はもう終了したネ」

「あ、本当だ」

「それでさぁ、その1000万は俺らにくれるの?」

「え?」

「え?くれるんだよな??」


銀時がそわそわした様子で右手を差し出す。
伊智はきょとんとした顔でテーブルに置かれていた札束を自分の懐に戻した。


「え……ええぇぇぇぇ!?なんで!?くれる訳じゃあないの!?」

「いや、ちょっと重たかったから出しただけで…何もこれ全部あげるとは」

「そんな…おま…そりゃねぇよ…もちろんって言ったじゃねぇか!」

「ボンビーな私達バカにしてるアルか!?マダオあと1人連れてきてやるぞ!金に対する執念見せつけてやるぞ!」

「いやもう一人のマダオ連れてきてもなんの戦力にもならないよ!?」

「じゃあここに住ませてください」

「「「ええ??」」」

「いきなり話が飛んだネ。接続語の意味を介してないヨ」

「伊智さん、いくら銀さんを好きでもここ住むことは…」

「私、働ける器量もあるし家事もできます!料理だって生きていける分にはできるんです」

「そういう問題じゃねぇだろ……だいたい、見た目新八くらいと変わんねえだろ。家族はどうした?」

「あ……おんちゃんは、…村に」

「伊智さんは今どこに住んでるんですか?」

「歌舞伎町の外れの方に、一人暮らししています」

「…住む場所があんなら、そこを大事にしろ。俺が白夜叉だった。言っとくがお前の望んだような男じゃねぇよ。…依頼はそれで終わりだろ?」

「う…」

伊智は俯いた。


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