「銀時さまとデート、銀時さまとデート」

「違うからねー伊智ちゃん。これ買い物だから」

「腕を組んでも…いいですか?」

「とか言いながらもう組んでるからね。うん、いいけど」


二人で大江戸スーパーかだ万事屋までの道をのんびりと歩く。
銀時さまの逞しい腕にそっと頬を寄せながら歩くのは、とても幸せでドキドキした。
結局あのじゃんけんで負けたのは私と銀時さま。いや、私にすれば勝ちなのかも。
ティッシュ箱を買うついでに今夜のご飯も買って、自分ちのご飯の材料も買って、あと私の家のトイレットペーパーも買っておいた。
さりげなく大きく重たい袋を2つとももってくれた。優しいのは今も昔も変わらない。


「ねえ銀時さま?」

「あー?」

「月詠に、先日謝りに行きました」

「……ふーん」

「月詠と、お友達になりました」

「へーそうよかったねー」

「これからもっといっぱい、お友達……欲しいです」


無意識に、銀時さまの袖口をきゅっと握った。


「この町に来てから、誰ひとりとも関わりを持ったことはなかった。あなたに会うまで…ずっと…」

「…………伊智?」


急に言葉を止めた私の顔を覗き込むように、銀時さまが私を見た。


「……だから、…嬉しかった、です」

「…そうか」

「銀時さまにも会えたし、」

「そういえばよォ」

「?はい」

「お前…どうやって俺の居場所、突き止めたわけ?」

「は?」

「最初から気付いてたんだろ。俺が白夜叉だってことに」

「ありゃー…バレちゃった」

ちらりと舌を出して惚けてみる。
好きな人の顔を忘れるなんて、そんなこと絶対ありえない。
最初から万事屋銀ちゃんの坂田銀時は白夜叉さまだと知っていた。


「誰から聞いた」

「…」

「何しに来た。今更」

「…ひどい銀時さま」

「ちゃんと話せよ。俺の事、好きなんだろ」


銀時さまが立ち止まって、私をじっと見た。


「……愛していますよ。もちろんです」

「なら…話してくれたっていいじゃねェか」

「銀時さまは私の事を愛していないでしょ?」

「っあ?」


一瞬目を見開いた銀時さまをみて、気付かれない様薄く笑った。


「銀時さまが、心から私を愛してくれる日が来たら…教えてあげてもいいよ」

「言ってくれんじゃねーの。いいの?そんな事言っちゃって」



刹那



「………え」



グシャッとレジ袋が地面に落ちる音が遠く感じた。




目の前に、少しでも顔を動かせばキスができるくらい銀時さまが近くにいる。
でも顔を動かすことができないのは、顎を固定されているから。





「このままキスしてやってもいいんだぜ?伊智ちゃん」

「…な……」


ドンッ


「ん」


「「………」」


「あ、すまぬすまぬ」


「「……う、お」」



固まっていたら後ろから肩を押されて、ピッタリと私と銀時さまの唇は重なり合った。
すぐにパッと話して赤くなった顔を下に向ける。
な、な、何が起きたの今………!!!!!



「大丈夫かそちら」

「だ、大丈夫どころじゃねーよテメー……バルス発動してやってもい」

「はっ…う」

「お、おい伊智しっかり…って、バ…ハタ皇子かよ!!」

「おいバカって言いかけたろ」




足腰の力が抜けて倒れる私を銀時さまが支えてくれた。
ちらりと顔をのぞいてみたら、いつも白い肌が真っ赤に染まっていた。
あれ……銀時さまも照れて、る?




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