「ホント、犬にそっくりじゃ」

「……もう犬でもなんでもいい」

「伊智、と言ったか」

「はい」

「これから仲良くしてくれ。何よりわっちは、友達とやらが少ない。………なってくれぬか?」


右手を差し出され、伊智は畳の目を見た。


「……しょうがないですね。仕方ないから、なってあげてもいいですよ。私も友達少ないんで」

「ぷっ…そんな生意気な事言われたら、そりゃだれでも離れる…!」

「だから、笑わないでって!」




お互いの手を握り合ったまま、笑を零す月詠と顔を赤くしながら憎まれ口を叩く伊智。




「…でも、会えなくなるかもしれません」

「…?ん?」

「……もし突然私が、この町から消えた時―」

「…」

「その時は、銀時さまを…よろしくお願いしますね」

「伊智がそういうのであれば…。任せろ」

「…ん、」

「何か、もめごとか?」

「いいえ………」


洛子の向こうから青い空を見た。



「私は、蝶だから。…薄汚い、赤黒い、血で濡れた蝶」

「……ならば、わっちは蜘蛛じゃ」

「…蜘蛛?」

「蜘蛛と、蝶。似ているようで似てないな」

「……うん、そうだね」



蝶は、亡霊の魂の化身とも言われている。




私はただの生贄の型にすぎない。




あの村の恐ろしいところは、まだまだこんなものではない。




20111205
なんかよくわかんねえ
お気づきの人はいると思いますが
村のイメージは零の紅い蝶です


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