「レギュラー?」

「とぼけないで。知ってるのよ私。あなたがここに、やってきて、頻繁にここに出入りする理由を!」

「あなたもですか?ホント、銀時さまのご友人はしつこく付き纏う人が多いわ」

「ナシガ村、結構私達の仕事柄では有名なのよ。あそこの神御越しは恐ろしすぎる、ってね」

「………」

「籠の中に入れられし生贄よ、神の魂を声にしろ。村から出るな。忘れるな。決して、真実を口外するな。恐怖から逃げ出すな。籠を閉じ込めし人々よ、村から出たものを抹殺せよ。村から生まれしものは村で死す。村の掟は絶対。之、柴田家に記す」

「……」

「生贄を神にささげる神御越し、って…村人全ての生血を飲み干して、全ての人と一つになり、左目をささげ、右足を差出し、右の耳を渡して脳を譲る…そういう行事なのよね」

「…私は、見たことがない。何も知らない。聞いてはいけない」


先ほどまでの甘い声とは裏腹の、低い小さい声で伊智は呟いた。



「知らない。知らない。知らない」

「柴田家の家系図を見たら、生贄として捧げる柴田兎姫は既に殺されていた。柴田家はその代で途絶えていた。でも、もう一人。その血を受け継いではいないけど、神に捧げるに値する女が、いた」

「猿飛あやめ。それ以上、口にすると…」






空気が止まった。



鼻と鼻がぶつかる寸前、お互いの荒い息を肌で感じるほど間近で伊智はさっちゃんを睨みあげた。








「抹殺するぞ」














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