「それで、今日はどうしたんですか」

「あ、あぁ…。先日のお礼と言っていいのかわからぬが…アイツがずっと前から飲みたがっていた酒をついに手に入れたから二人で飲もうと思ってな…」

「……そうですか。素敵なお酒なのですね」

「ああ…少々アイツにはキツいと思うんだが、そこが心配だ。酔い潰れたりしないだろうな…」


小さい声でボソボソと独り言を呟く月詠さま。
私は俯いて、着物を握る手にギュッと力を込める。




「って……」

「え?」

「え……って」

「そういえば、おぬしは一体……また万事屋も人が増えたのか」

「早く帰ってって言ってるでしょ!!!!!!!!!!」




空気が止まった気がした。
私はその重みに耐えきれなくなって、玄関まで歩いた。




「早くっ………帰ってよっ………!!!私の事、白夜叉さまの事、何も知らないくせに!!!!」

「なっ…わ、わっちが失礼な事を言ってしまったか?」

「あなたがここにいることが迷惑なの!!!!!お願いだからっ………もう…帰ってください…」



引き戸の前でしゃがみこんで顔を覆った。涙が止まらない。
月詠さまが駆け寄ってきてくれたけど、私はその手を払いのけた。





「……そうか。そちにすまぬ事をした。銀時には、また…と伝えておいてくれ」

「……」

「では、失礼する」





月詠さまは一礼して出て行った。そう。もう二度と来ないで。
顔なんて見たくない。声も聴きたくない。
私の知らない銀時さまを知る人なんて消えちゃえばいい。
居間まで戻って、テーブルの上に置いてあった酒瓶を床にたたきつけた。



バリィィン



瓶の欠片と酒の飛沫が床を跳ねて私の周りに飛び散る。
血が少し出た。頬についた甘い酒を舐めてみた。




「あれ……しょっぱ…」




酒と思えば涙だった。


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