背伸びをするな


白蘭は大人で、私は子供だ。

それはもしかしたらとてつもなく大きな問題なのではないか。そう気付いたのは、3分程前のことである。

前から思っていた。白蘭は私を子供扱いする。
それは、むかつく。何だか気に入らないわ。

私たちの間には物理的にも精神的にも差はあるかもしれない。でも、嫌だ。理不尽。そうね、理不尽なんだわ。なんだかおかしいもの。

試しに、ぎゅうっと抱き着いてみる。動揺どころかにこりと笑ってかわされた。
レディじゃないから何とも思わないんだ。むかつく。むかつく。


だから、がぶり。ちらりと見え隠れする、その白い首筋に噛み付く。
透き通るようなそこに吸い込まれそうになったのは嘘ではない。でも私は、意図的に行動したのよ。


「…痛い痛い痛い」
「……うー」

やんわりと、でも確かな拒絶を隠そうともせずに引きはがされた。

「何しているんだい、ブルーベル」
「白蘭にキスマークつけてやろうと思った」
「違うでしょ。……こうするんだよ」
そういって、白蘭は私のほうへ近づいてきた。肌に当たる柔らかな髪の毛がいやにくすぐったい。
数秒後、鎖骨あたりに痛みが落とされる。
まるで、毒されたかのような錯覚。

「君は僕のモノだけど、僕は君のモノじゃあないよ」

ずきん、先程のものとは違う痛みが私を襲う。心臓が痛い。心、なのかな?

でも、それでも。

キスマークよりも噛み痕のほうが消えにくいんじゃないか、そんなちっぽけなことを考えてしまうんだ。
一瞬でもいいから私の白蘭になってほしかった。
きっとそれは、私からのせめてもの抵抗よ。自分でも分からなくなってきたけど。

白蘭は、私が精一杯背伸びしたって届かないところにいるのね。
いっそのこと、あなたが堕ちてきてくれればいいのにな。
私が行けない高さにいるのなら白蘭が私のところまで降下すればいいのよ。
進歩を諦めて相手の堕落を待つのは駄目かしら。


「…ニュニュ」

やっぱり待つのは嫌だわ。私が、引きずり落としてやる。


覚悟しなさい。



少女のいる部屋から少し離れた場所にいる、姿が、身に纏う雰囲気が、真っ白な男は何かを感じたのかそっと身震いをした。

「楽しみにしているよ」


少女と男は、不敵に笑っていた。




白ブル企画の、burla様に提出。
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