002

どんなときでも、お前は俺を頼らなかったから。
昔みたいにめそめそ泣いたりはしなかったから。


カーブを過ぎて、真南の家の前。
真南を下ろして、前カゴの鞄を渡してやる。
受け取る手が少し触れた。

「ん。ありがと」

携帯につけるシールみたいなのを沢山くっつけた真南の爪が、ベージュのカーデから覗いている。
ぶかぶかのカーデ。短いスカート。
確かに女っていうのは、こーゆうモンなんだろーけど。
如何せん足りないものが多すぎて言葉に詰まる。

その薄い胸板に、軽い同情をこめて小さく溜め息。
真南は訝しげに顔をゆがめる。
何を思ったのか、馬鹿のくせに気になるらしい。

臙脂の煉瓦に埋め込まれた「萩谷」の表札が割れかけていた。
直す気はないらしい。記憶が正しければ中学に通っている頃からこうだった気がするが。

「さっきから黙ってんね。どうしたの?」

もしも、だとか。
いつか、なんて願望も関係ない。
いつも、だ。

俺がお前の隣にいるのは、変わらない事実なんだから。

「まな」
「な、なに?」

空きすぎた間に妙な違和感。
真南の心臓が跳ねた音が聞こえた気がした。
いつだって俺を振り回すんだから。
たまにはお前も振り回されればいいんだ。

「もうちょっと育たないわけ?」
「え?」
「一向に成長の兆しが見えねーんだけど」

胸元に視線を落とす。
みるみるうちに変わっていくその童顔が面白いくらいに真っ赤だ。

「ドガッ」、酷い音と共に全身を駆け巡る悲痛に体を折り曲げる結果は、見えていなかったわけじゃないけど。

「ばかっ!えっち!!死んじゃえ!」

昼間の怪我が未だ完治していない箇所にお見舞いされた拳。
痛すぎる。
いや、ここは頬を叩くとか、もう少し可愛らしい反応してくれてもよかったのに。


「あー…イッテェ」


とりあえず死んじゃえは酷いと思った。





**
11//12/31/22:32
年内!間に合った(笑)
お正月?仕事ですよ…あーあー世知辛い。

ハベナリア:鷺草、芯の強さ

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mokuji
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