−6−

そうこうしているうちに校門の前に着いてしまった。
さぁどうする。


「城多先輩おはようございます」
「っす!」
「うわ、城多だ」
「女連れだ」
「怖ぇ…」
「ちょっと、誰あの子…黒にあんな子居たっけ?」

早速見つかって、取り囲まれる。
一気に湧いた城多の舎弟たちが「誰すかその子」「彼女さんすか」「彼女さん、お疲れ様っす」質問やら挨拶攻めにしてくるのに面食らって逃げるのが数秒遅れた。

「っわ、私もう行くんで!」
「うん、また放課後」
「は?え…?」
「カフェ行くんでしょ」

さらっとカップルめいた発言に、「ヒューヒュー!」取り巻きの一人がちゃかしてくる。

いや確かに行くし城多にも会うけど…それはバイトで!

「っ…周りに変に誤解されるようなこと言わないでください」

取り囲む人たちを掻き分けて、ダッシュで昇降口へ向かった。
振り返らなくても、わかる。
笑いをこらえて、次はどうやってちゃかしてやろうか考えてるんだ。

周りの視線が痛い。
からかわれたのと、注目を浴びたことで恥ずかしさは2割り増しだ。
早く周りの視界から居なくなろうと必死に走った。

また真南がむくれそうだ。
「姫ちゃん、城多には気をつけてって言ったでしょ!」なんて叱られるかもしれない。

でも…何か気になるんだから、しょうがないじゃない。
相手は不良だけど。
関わりたくないのは彼らの「行動」で、「彼ら」自身は色々かかえてたり…
あれ?また流されてる?

感化されているのだろうか。
履き替えようと、足下に置いたた上履きに目を落とす。

「え?何これ」

イニシャルの横に変な猫のような落書きを見つけた。
やられた。真南だな…絶対。

怒りはしないけれど、うれしくはないから、やめてほしいな。

履き替えたら、足の裏に何かが当たった。
脱いで裏返せば、落書きされた猫のキャラクターらしき絵がプリントされた飴玉が入っている。

しょうがないなぁ…

飴玉を摘んで、つい口元がゆるんだ。
朝早く来てこんなかわいらしいイタズラをした友人は、教室で私を待っているのだろう。

ふと思った。
城多にとって、黒瀧は多分。
私にとっての真南なのかもしれない。
困らせてくるくせに、憎めない存在。

「ま…ここまで考えてあげる必要ないけど」

不良は、不良なんだから。

飴玉を口に放り込んで、私は教室へ急いだ。



(次、城多sideへ続きます)
 

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mokuji
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