−3−

「あ、寝ぐせ…」

朝日に反射して、金色に光る髪に片目が眩む。

伸ばしかけた手を引っ込めるのと同時に、何かが脳裏をかすめていった。

「なおしなよ。「  」。」

朧気な記憶が頭の中で蘇る。
広い庭に、大きな噴水。
芝生を駆け回る少女と…少年。
本当に自分の記憶なのかも、幻聴なのかもわからない、でも当然のように脳裏に刻まれている「夢」。
どこまでも響く、どこか懐かしい声。

何だろう。
こんなこと、前にもあったな…
そうだ、このまえ体育の時間にボールが頭に当たって…それで……私と誰かが話してる夢を見て…確かこんな雰囲気の、噴水に腰掛けて誰かとしきりに話をしてた…
それで、覚めたら…

そう、目が覚めたら。
連れ込まれた保健室で、この男が「マナをどうこうしてほしくなかったら俺の言うこと聞け」って脅してきたんだった。

「うわっ怖い!何その貞子顔負けの怖い顔」

キッと城多を睨み付ければ、丁度スマフォから目を離したらしく目が合ってしまった。
オーバーリアクションにいい加減辟易するが一々対応していてはきりがないから何も言わない。
「夢」やら記憶のことはとりあえず隅に片付けて、私の頭は、「城多とは無関係を装うってことが先決」だと結論づけ、また足を早めた。
平和的学園エンジョイライフを送るにはまず城多をまかなければ。
すでに猫同士の諍いに片足突っ込んでいるような気がしないでもないが。

あーアホらしい!
あの保健室で話した時、なんであんなにビクビクしてたんだろう私のバカ。
思い出したらムカムカしてきた。

 

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mokuji
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