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「なんだよ。ていうか怯えないでよネズミちゃん」
「怯えてないし、灰葉です」

信号が青に変わった。
足早に白帯の上を踏みしめるけれど、リーチの違いですぐに追いつかれてしまう。

チッ…無駄に足長いんだから…
やだ舌打ちしちゃったテヘペロ(白目)。
最近、本当にマナに感化されてるなぁ…

羨望の眼差しで城多を見つめていた彼女たちも、それぞれ自分たちの目的地へ散り散りになる。
「あの人、王子様みたいだね」こちらをチラチラ振り返りながら前を歩く小学生の片方の子がそう言い、もう片方も同意して頷いた。
はぁ?なんて思う私の顔に、城多が「百面相」と笑う。
だって本当に、はぁ?って感じなんだけど。
いつも私をからかって遊んで、どこか馬鹿にされているような気持ちにさせられて…こんな王子様が居てたまるか。
王子様って言うのはね、優しくて思いやりがあって…って、写メを撮るなー!私まで写ったらどうしてくれる!

子供が向ける携帯電話(今時はこんなもの持たされる時代なんだ…)に暢気にピースしている城多が信じられない。
相手がいくら子供でも嫌じゃないのだろうか。
怒らないのは…余裕だからなのか。

小学校はもうすぐそばだ。
グラウンドが見えてくる。
ランドセルを揺らして角を曲がったその子たちの後ろ姿を見送って、私たちは逆方向の角を曲がった。
私たちは、なんて不本意なのだが…この男、いつまで隣に居る気なのだろうか。
まだ離れてくれないらしい。

「ハイバちゃんさ。ちょっと俺に冷たすぎない?別に取って食おうってんじゃないんだからさ」
「ごめんなさい。先輩、信用に欠けるんで」
「うーん…欠けるんだぁ〜それはキツいな」

大袈裟に落ち込んだリアクションをとる城多に、「そういう態度を言うんだけど」と思う。
何だかんだで相手をしてしまっている自分にまたため息。
どうして呼びもしないのに、私の周りには変な人たちが集まるのだろうか。
いい加減、白目が癖になりそうだったから必死に元の顔に戻しながら、変な人代表の隣の相手を盗み見る。

白いブレザーに、二年生のネクタイ。
留められた「黒猫」の印であるピンバッジ。

ていうか、あれ…?二年生?
この人二年生なんだ。
何か変だ。

城多は黒瀧に敬語など使っていなかった。
白猫のトップでも同じ学年の藤後心には使わなくても理解はできるが。
それだけ仲が良いからということなのだろうか。
いずれにしても自分には関係のないことだが、少し気になる。

「何?そんなに俺のこと見つめて…好きになっちゃった?」
「そっすねー」

またからかわれた。
肯定の言葉にもならない返事をすれば、彼は満足そうに笑った。
スマフォをいじる城多の明るい茶髪が歩く度にふわふわ揺れている。

 

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mokuji
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