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クリスマス企画

case:Yuki with Kiyu
(snow, I know.)

side:yuki


学校に向かう途中の信号待ちの際、隣に立つ女子中学生が暗記カードを見つめているのが目に留まった。
二つに結わえた健康的な黒髪が、振動の度に揺れる。
閉じきれない鞄の端から分厚い冊子が覗いている。
おそらくは赤本だろう。

(受験かぁ…)
勉強机にかじりついて、必死に数式や年号と睨めっこしていた冬を思い出して軽く目を閉じる。
中間テストを間近に控えた今、自分だって彼女たちのように勉強から目をそらせない状況ではあるが。

(そういえば、三苗(みみつ)に行くって言ったらみんな反対してたなぁ)
志望校を伝えたとき、親を始め周りや担任の先生が皆一様にして乗り気ではなかった理由が今では聞かなくてもわかるけれど。

「もっと目立たない制服のところにすれば良かった…とは思う」

三苗の白ブレザーと、セーラー服を着た他校の見比べて小さくため息。
後から来た紺ブレザーの他校生を見ても、やっぱり、目立つ。

「おはよう」
「!」

そこで思考は中断される。
ぽん、と軽く肩を叩かれて自分に向けられたであろう挨拶に反射的に顔を上げれば、城多騎由が聳え立っていた。
そう、文字通り「聳え立っていた」。

「な…何か用」

声を絞り出したら、うなり声みたいになってしまった。
苦笑する城多は、また距離を縮めて隣に立つ。
バイトでしょっちゅう会っているのに未だに慣れない相手を前に身構えて後退るが、ここは信号待ちの歩道である。
無駄に終わるのは目に見えていた。
キリン…いや、ライオンとか恐竜とか、それくらいの圧倒的な強者が私を見下ろしにこやかに笑いかける。
無駄に笑顔を振りまいている城多に、隣でSOY●OYを食べていたOLさんが恥ずかしそうに食べるのをやめた。

前でキャッキャしていた小学生二人組も話をやめ、イケメンだ!と指をさして言う。
さっきまで暗記カードを見ていた子まで完全に思考停止した様子で頬を赤らめている。

あぁあ鬱陶しい!

叫びだしたい衝動に駆られるが流石に怖くてそれはできない。

「そのキラキラオーラ、なんとかしてください」
「キラキラ?」

校舎まであと5分程度。
たかが5分、されど5分だ。
この男とこのまま仲良く同伴通学なんてしてしまったら、どれだけ注目を浴びてしまうかわかったものじゃない。

「目立つじゃないですか。メットでフルフェイスするかもう少し離れてくださると嬉しいです。私、この三年間の学校生活を平和に送りたいんで」
「酷いなぁ。みんなこの顔が好きって言ってくれるのに」

ああ言えばこう言う。
まだ見とれてそわそわしている周りの女性たちに、私は心の中で叫んだ。

みなさーん、騙されちゃ駄目ですよ!
この人、不良ですよ!
しかもカツアゲ係なんですよ!

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mokuji
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