004

***


自宅謹慎3日目。
土曜日ということもあり半日で授業は終わった。
近所の駄菓子屋で買った菓子その他をちらつかせながら萩谷家に上がり込むと、母の月(ユエ)が忙しなく客人を持て成す準備を始めた。
いつも来ているのに何を改まって…とは思ったが、今回のことがただの喧嘩ではないことは皆がわかっていることだ。
真南の精神状態次第では、長居しないほうがいいのかもしれない。

いろいろと気を遣ったつもりだったが、取り越し苦労だったらしい。
結論から言うと、真南は「大丈夫」だった。


「で、原因は何だったんだよ?まな板」
「まないた言うな!」

ガン、
脳天に直撃したチョップはいつも通りの破壊力だ。
ようやく本調子に戻った真南に、事の詳細を説明させようとしたのだが、これが面倒くさい。
喧嘩の理由はだいたい予測がつくが、それだけでは「泣いた」ことの説明がつかない。


何で泣いた。
たった一言聞けば案外簡単に答えるかもしれないが、デリケートな年頃の女には要注意。
これが良くも悪くも一世一代の転機をもたらす結果になるかもしれない…
変なところで考えを巡らせてしまい、ドツボにはまるのも彼が野守怜ゆえにであった。


「泣けたでしょ」
「?なにが」

聞き返すが、すぐには返答せず。真南は体育のジャージ姿で寝転がった。
おいおい…
一階に母親がいるからといって男一人部屋にあげておいて、本当に危機感のない奴。
逆に、男として意識されていないということでもある。
意識されても困るが、こうも全く意識されないというのも少々癪に触る。

「シータがあの眼鏡にお下げを二本とも打たれてしまったあのシーンだよ」

…シータ?

「りーて、らとばりた、うるす、ありあろす…」
「頼むから日本語で喋ってくれないか」

意味不明だ。
もともと意味不明な生き物だということは承知だが、言葉だけは唯一通じるはずだった。
そのはずだった。

「はー…あたしの髪がね、ラピュタの名シーンのように破壊されたんだよ」
「あ、ああそうだな」
「悲しくて涙が出ちゃう」
「…」
「女の子だもん…」
「あ●はらこずえかお前は」
「バルス!!」
「…」

ああ、やっぱコイツ、バカだったわ。

少しだけ安堵した。
バカを言える元気はあるんだな。
そう思ったからだった。

「あの時どうして俺の前で泣いたんだ」

そう聞いたところで、まともな答えなど、きっと返ってこない。
本人にもわからないのかもしれない。
女って、ほんとわっかんねえ。

「でもまぁ、」
「ん?何か言った?」

たまにはパズーになってやってもいいんだぞ。

「…いや、やめとこ」

言いかけた言葉は、飲み込んだ。

「なんだよ怜、言いかけたんなら最後まで言う!」

いい加減、俺もコイツに毒されすぎている。


「なんでもねえよ。めんどくせぇ」




2013.10.01.
まなちゃんとれいくんの、中学2年生のときのお話。
ちなみに二苗中学校2-B。
>> 文字訂正…
 まお兄の漢字は真王に変更。nanoに送る前にちゃんと直してなかった;;

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mokuji
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