002

1クラスの半分は女子だ。
たった20人弱の小さな社会でも、いくつかのグループに分かれてそれは成り立っている。
うちのクラスの場合、所謂優等生グループが2組、ごく普通のグループが数組。
グループは作らず一人で行動している者が例外として2、3人程度存在する。
萩谷(要するに幼なじみの萩谷真南のことだが)も、その一人だった。

グループで行動する年頃の女子というものは理解し難い生き物で、小さなイザコザは日常茶飯事だ。
そのイザコザが大きくなると、第三者が仲裁に入らざるを得ないほどの衝突が起こることもある。
それが男子生徒のことともなれば尚のこと、というよりイザコザのきっかけを生むのも男子の存在であることのほうが多い。

そもそも、その「衝突」の発端となったのは、実の兄二人のことが原因で生まれている日頃の鬱憤ゆえに飛び出した真南の一言であった。


「あんたさぁ、妹だからってしゃしゃりすぎじゃない?」
「風紀委員までくっついててさぁ。うざいんだよね」
「出る幕ねぇんだよ」

萩谷家長男・真生(マキ)。二苗(ふみつ)中の最高学年にして風紀委員長。
萩谷家次男・真王(マオ)。同じく3年の風紀委員。こちらはさぼり気味。
どちらも容姿端麗、学業優秀。同じ顔、それもジャ●ーズ顔負けの二人を女子が放っておくはずもない。
行動力のある女子は幾度となくアプローチを仕掛け、二人もそれなりに相手をしてはいたが、「それだけ」だ。
長男は妹以外の女に興味がないので大した進展は望めず、次男は自分と同じ顔の兄に対し敵対心をもっており、その兄を如何にして「潰し」、如何にして真南を「独り占め」するかを考えることに余念がなかった。
理由はどうあれ、そうさせるのは妹である真南の存在である。
真南を溺愛しているという点では、どちらも似たようなものだ。
気持ち悪いことこの上ない、のだが、周りの女子からは「妹ってだけでイケメン兄貴にちやほやされている生意気な女」と映るわけだから始末に負えない。

けれど全てを差し引いてもあまりある真南の手の速さが問題だったのは、過去10数年間付き合ってきた怜だからこそわかることなのだが。

「は。バッカじゃないの。マキ兄があんたらみたいなの相手にするわけないじゃん」

バッカじゃないの、というよりも早く。
真南は目の前にいる三人の真ん中の女子の顔を思い切りひっぱたいていたのであった…

「今度の試合で、あなたのボールになりたぁいbyさきさか(はぁと)って横断幕に書いといてやんよ。今時そんな古いこと書く奴いないけどね!」

真南の言う今度の試合、とは来週行われる男子バスケ部の他校での練習試合のことだ。
おそらく彼女らも応援に行くであろうことは予想はつくが、まさか横断幕のことが図星であったとは、そこにいた誰もが予想はしていなかった。


7/17

*prev next
mokuji
しおりを挟む
index
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -