cherry drop

ママは言った。

《パパはね、ママが二番目に好きになった人なのよ。》

今思えば何故それ程ショックだったのか笑ってしまうくらいなのに。
子供心に なんてひどい話だと思った。

母の一番は父であってほしかったのだろう。
そう言ってしまえば可愛らしいものだけれど。
裏切られたような気がしていたのだと思う。

唯一、なんてものが 一番最初に見つかるなんてない。
少女漫画ではないのだ。
そんな奇跡は有りはしない。


《初恋は、実らないものなのよ。》


私の髪を梳きながら、ママは言った。









「私は弄ばれたんだ」
「君はどうしてそう捻くれた考えに至るんだか」

薄紅の花が舞う3月。
卒業式。

最後の最後で決死の告白をしました。
担任教師、男性。
バツイチ、でも妻子持ち。

キスまでした相手には、これっぽっちも「お付き合い」している考えはなかったらしい。
そしてこれからも。

なんてひどい話なんだと思った。


「手近に若くて可愛くて口の堅い女がいたから手を出したってわけね」
「身も蓋もないことを言うな」

だいたい、手など出していないだろう。
彼は納得出来ないとぶつぶつ呟く。

「それに、君の自己評価がそこまでとも知らなかった」
「私、完璧な生徒だったでしょ?」
「そういうのは、自分から口に出さない奴を言うんだ」


かわいい。
かわいい先生。
いじめたい。
大好き。


「…せんせー」


初恋は、実らないんだって。
あなたはしってた?


「君の気持ちに嘘は無いんだと思う。でも、それは気の迷いだよ」

君は若いから分からないだけだ。

「卒業して、環境が変われば俺のことなんて直ぐに忘れる」

環境が変わっても、気持ちまでは変わらない自信があるよ。

気が狂いそうなくらい好きなのだと言っているのに。

時間が解決してくれないのなら、
私は、どうやって諦めればいーの?

「すぐって?」
「すぐはすぐだ」

「3日?3年?30年?」
「3日で、忘れられればいいな。そのほうが楽だ」

「そうだね。私は一生忘れないけど」
「やめてくれ。後ろめたくなる」

大袈裟な溜め息に胸が満ちる。
眉を下げて、少し苛立った顔。

スマートに何でも解決したがる彼を、最後まで手こずらせられたのなら本望だ。

もっと困らせてやればよかった。
もっといっぱい甘えればよかった。

「ねー、先生」

だから最後くらい、いいよね。

「すき」
「……ああ」

「えへ。言っちゃった」
「言っちゃった、じゃないだろう。全く」


それ以上は言えなかった。
先生が、酷く悲しそうに笑ったから。

言っちゃいけないことだったのかな。
答えは誰もわからない。
今でも、きっとこれからも。

「卒業おめでとう。元気でな」

まるで今生の別れみたいに。
ボロボロ泣き出した私を見下ろして、彼は言った。

「君以上に、手の掛かる生徒はいないよ、きっとこれからも」

それは私が、彼にとっての唯一になれたということなのだろうか。
ぼやけた視界に先生がいる。
困った顔で、笑っている。

薄紅の花が舞う。
初めて出会ったこの場所で。
薄紅の花が、散る。







**
ちなみにわたしの初恋は忍たまの若い方のあの先生でした。
忍者って格好良いよな〜。なノリで。
初恋の次はナルトの左目の写輪眼のあの先生でした。
忍者ってやっぱ格好良いよな〜なノリで。

ええ。わかっていましたとも。
実るわけがねぇ。


2/2

*prev next#
mokuji
しおりを挟む
index
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -