020

「それでね、あとね、」
「うん、うん」

容易に口を挟めないほどに学校の話をあれこれと話して聞かせる真南。
友人の髪を撫でながら鞘子は此方に微笑む。

「まあ安心したわ。あとはその不摂生すぎる食生活くらいかな」
「なぁにそれ」

幼馴染と聞いたが、本当に仲が良い姉妹のようで微笑ましい。
なんか…良いな。
…っておっさんか私は。
二人の様子に思わずにやけてしまいそうになる口元を慌てて正した。

「ハンバーガーとか、ポテトだとか、ファーストフードばっかり食べて」
「あー…わかります、すごく」
「でしょう?心配よねえ、兄妹そろってコレだからもう」
「さ、サヤ先輩…」

不良たちの様子は相変わらず可笑しなままだが、まあいいか、そんなことは。
大人しくしているんだから気にする材料がなくなってむしろ大歓迎なのだから。

それにしても彼女だ。
何て…

「何てマトモな人…!!」

そう。
マトモなのだ。

「ん?」
「何か言った?」
「ごほん、い、いえ別に」

ええもう、何でもないなんてそんなことはないけどね。
ゴールデンウィークに入って早々バイト先に黒猫やら白猫やらが押しかけてきて、あまつさえ黒猫の実質ナンバー2がこのカフェでバイトするなんて事件が起きた今だからこそ実感など湧くわけがない。
が、しかし。

三苗に入って、いろんなことがありました。
喧嘩、カツアゲ、リンチ(現場を見たことはないけど)…。

そんな環境にいて保とうとしつつ、忘れかけていたもの。
それは本来人間が人として持ち合わせるべき「マトモ」さ。

47/52

*prev next
mokuji
しおりを挟む
index
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -