007

流石に意固地になられると守りようがないというか。

「そんなんじゃないよ。でも…変なかんじ」

既に次の授業の教科書が出ている席に着く友人に習い私も自分の席に座る。
フックに鞄をかけ、前を向いたままの友人の背中を見つめた。

保健室で何か言われたの?
城多に突っかかったって、何で?

そもそも、気にはなっていた。
友人がというより、あの時の城多らしからぬ行動に。
笑顔で人を殴れるような男だ。
あんな得体の知れない奴に友人が絡まれているのは我慢ならない。

「あ…あのさ、雪-」
「こら、予鈴鳴ったの聞こえませんでしたかテメーら」

声をかけようとして、いつものガラガラ声に邪魔された。

「HR始めますよー。席つけガキ共」

相変わらず取ってつけた敬語プラス砕けすぎた物言いだ。
どうやって教員免許をふんだくってきたのか是非とも教えてもらいたい。

「ヘェイ」
「みよせオハヨー」
「あぁ?先生つけろコラ」

「げ、みよちゃん来た。席つこ」
「げ、じゃねえだろユイコ、遅刻にすんぞ」
「だからユイコって呼ばないでよ!」
「じゃー欠席な」
「ひどっ」

みよちゃんこと明星一等(みよせかずひと)。1年D組の担任教師である。
担当科目は保健体育。
脳味噌筋肉、とまではいかないが三苗の卒業生なので真面目な講義は期待できない。
放任主義ではあるが、生徒ウケは上々だ。
私も一応嫌いではない。

(雪姫ちゃんは苦手みたいだけど。)

「ああそうだ、明日からゴールデンウイーク5連休だけどな、その後に楽しい楽しい中間テストと一部クラス替えがあるんだ。テストについては言っても変わんねーと思うが一応言っとくな。クラス替えはー…とりあえずまぁ、始末書が面倒くさいんであんまり喧嘩すんなよ。以上。解散ー」

起きかけのハムスターだってこんなだらけた態度はしない。
教師の風上にも置けない担任教師はだるそうに連絡事項を告げながらさらっと教室中を見渡した後、出欠簿に何か記入(書くフリなのは誰もが解っている)し、さっさと教室を出て行く。

「SHRにも程があるというかその前に最後の解散て何なの…」

真面目な友人は本日も漏れなくイラッとしたらしい。

(あの先生楽でいいじゃんって思うけどなー。)

そんなことより。

「きーてないよ。なに?テストって」
「中間テスト。何、マナの中学には無かったの?」
「……そんな都市伝説もあったかもしれない」

現実逃避を行き過ぎるとこういう考えに至るんです。
てかむしろ信じればそれこそが真実であってですね、ていうか中間テストってなにそれおいしいの?

「べし。」即座に思考停止させてくださった友人からの顔面ビンタに一瞬目を瞑る。

「いったぁー何す、…」
「マナちゃん?」
「ひゃい」

再度目を開ければ、愛しのお姫様の怖すぎる笑顔が飛び込んできた。
何しろ目が笑っていない。

「最優先で行うべき学生の本分を都市伝説化すな」
「…あははー」

ひきつった笑みを返すしかなかったのは言うまでもない。

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mokuji
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