006

「んー?」

教室前の廊下で、窓から外を眺めている友人を発見。
灰色のカーデに規定の長さのスカート、綺麗な上履き(私は履き潰してるし落書きとかしてるけど)。
マイラブ雪姫ちゃん。
超真面目。超可愛い。超大好き。

「ゆ、き、ちゃん!」
「みぎゃっ」

背後から近寄り、ガバッと抱き付けば彼女は女の子らしからぬ悲鳴(?)をあげた。
これだけの反応をしてくれるなら、悪戯した甲斐があるというものだ。

「おはよう…マナ」

いや、どっから出したその声。
返ってきた恨めしげな目と重低音に本当に友人の声なのかと疑ってしまった。

「やだー何今の声、低っ。大丈夫?」
「マナは朝から元気だね」
「もうっ、良い若いモンがだらしないぞ」
「いやー…だらしないとかじゃないでしょ」
「何外見てんの?何かあるの?」
「ううん。別に。教室入ろ」

もう一度窓の外に目をやって、彼女は何でもないと首を振る。
私を先頭に教室へと促すその手が少し強引なのが気になりはしたが、まぁいいかと無理やり自己完結。

「目ちょっと赤くない?てか心なしかやつれてない?」
「んー…わかる?」

教室に入れば後ろで古賀達がUNOで遊んで居るのが見えた。
神妙な顔でカードを選んでいる。

「寝不足?」
「んー、ちょっとだけね…」

黒板に落書きしている数名の女子の後ろから日直の週番を確認すると「古賀」「小宮」になっていた。
古賀も小宮も絶賛UNO中だ。
この分なら また友人が日誌を書くことになるのだろう。放っておけばいいのに、あんな適当な教師に何の義理があるのか。

曖昧に返す友人の目の下が少しだけ赤い。
寝不足かと問えば相手は困ったように頷いた。

「最近変な夢見ててさ、あんまり眠れてなくて」
「それダメ絶対。お肌の大敵。どんな悪夢見てるの」
「よくわかんないけど確かにちょっと怖い夢かも」

苦笑混じりに返す友人が後ろ手でドアを閉める。
一瞬、今朝怜から聞かされた言葉がよぎり、ひやりとしたものが額を伝った。

「夜中に目が覚めちゃうんだよね」

黒猫に、それ以上に「城多」に目をつけられた。
イコール、ネズミでいるつもりなら今までのようにはいかなくなるということを意味する。
抗う、受け入れる、若しくは飲み込まれるか。
どれも望まないだろう。
けれど、どれを選択するかは明白だ。
不真面目で不誠実なことが大嫌いな彼女が選ぶのは、自分にとっての「正しいこと」だろうから。

「な、悩み事とか?あたし聞くよっ」

雪姫ちゃん真面目だからなぁ。
不良ばかりの環境に参っちゃってるのはわかってるけど…


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mokuji
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