002

「城多に喧嘩売ったんだって?」
「売ってない」
「あー……そう」

にべもなく返すと、小さくため息をつかれた。

「こっち、結構話題になってんだけど」

やめてくんない?
非難する口調に、私もムッと口を尖らせる。

「あっちが売ってきたんだよ。あの野郎あたしの雪姫ちゃんにベタベタベタベタ…………あの姫抱っこがまた絵になるから余計憎らしいっつうか」
「いや論点ズレてねーかマナキチ」

何だとコノ……いやまぁ…否定はしない。
ぶんぶん首を振って頭を整理する。
考えるのは苦手だ。
人間能力というのは必ずしも万人に平等に与えられるものではないというか、まぁこのさいだからこれ以上言い訳もしない。

何故か知らないが、下級生の授業中に突然現れたどこの馬の骨(いや知ってるけど)に大事な主君をかっ攫われた気分なのだ。
実に面白くない。

噂をすればなんとやらというやつなのか。
あれは体育の合同授業中に城多についての話題を振ろうとした時だった。
双方のヘッドよりも更に危険な人物だから、近寄るべからず。
釘を指そうとした丁度その時に事件は起こったのだ。

「一応俺もお前も目付けられてんだからさぁ、自覚持てば。まぁお前バカだけどトモダチのよしみで口添えくらいはしてやるけど」
「その言葉そっくり返すし」

それと、私はバカではない。
勉強がちょっと苦手なだけで、極々フツーの可愛い(強調)女子高生だ。

「で、そのネズミ、どんな奴?」
「雪姫ちゃん」
「はいはい、どーでもいいから」

興味無さそうな低い声。
ついでに面倒くさいのだろう。
コイツはこういう男だ。

「で、そのユキチャンてのはどんな子なんですかー」

どうでもいいなら聞くな。
相手がとってつけたように言い直すのも気にくわないが、説明は省かない。
雪姫ちゃんのことだしね。

「可愛いし頭いーし、不良じゃない真面目な子。うちの学校には絶対いないタイプ」
「え、なんで優等生がお前と友達やれてんの?イカレてんの?」
「うふふ、殴っていいの?」
「ううん、痛いから嫌だ」

一通り彼女についての情報は出回っていることは此方も承知だ。
数少ない女子の中で、どう考えても「普通」でしかない子が、「ネズミ」に属しているなんてことを不思議に思わないものはいない。



29/52

*prev next
mokuji
しおりを挟む
index
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -