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** side:mana



「行って来まーす」
「マナー、お弁当!あとこれお兄ちゃんにも届けてあげて!」
「えーめんどくさい」
「いいじゃないのそれくらい!」

5月2日・火曜日。
3日から7日にかけて5連休にもなるゴールデンウイークを前に、色々やらかした感は拭えない今日この頃。

萩谷家長女、3兄妹の末っ子 萩谷真南。
今日も元気に登校準備中。

家から学校までは徒歩10分。
たまに、5分。
…何故かというと。

「ん」

片方履きかけのローファーをそのままに玄関を飛び出したところで、やってきたマイタクシーにニンマリ笑う。
いつもの深緑のパーカーの上にブレザーを羽織るその格好で、荷台付きのママチャリに跨がる彼。
本人としてはお洒落のつもりなんだろうけどそれ明らかに間違ってるから。
でも面白いから黙っていたりする。
生暖かい目で見守ってやるのだ。
エライ私。

「れーい」
「んだよ」
「後ろ空いてる?」
「満席だっつの」

少年は肩にかけていた鞄をわざと後ろに回し、舌を出した。

野守玲(のもりれい)。
幼い頃から良く知っていて幼小中高と一緒だが、説明に困る間柄なので悪友と紹介するのが一番正しい気がする。

「よっと」

無理やり鞄をどかし、私はその不細工(笑)な後部座席に跨がった。
ジロッと睨む目に怯むことなくにっこり笑ってやる。

「ハイ出発」
「出発、じゃねえよてめ勝手に」
「遅刻したらクロたんにお仕置きされるんじゃない?」

今日は火曜日。
黒猫では毎週恒例の「アレ」に出なければならない日だ。遅刻したくないだろうから。

「クロたんとか、お前「裂かれる」よ?まじで」
「大丈夫〜サヤ先輩に許可取ってあるし」
「あー……そういうこと」

「アレ」とは通称、クロネコ集会のことだ。
ヘッドを中心に、にゃぁにゃあ言ってるんだろうか。いつ聞いても笑える。
白猫にも幹部同士で集まったりする「会議」はあるが、似たようなものだろうか(参加したことがないからわからないけど)。
一度ふざけて「どこの公園の砂場でやるの?」なんて聞いたら回し蹴りが飛んできた。
返り討ちにしてやったけどね。


車通りの激しい住宅街は朝だというのに歩行者が縮こまって歩いている。
悲しい話だが我々も無関係ではない。
車以上にスピードを飛ばす二人乗り自転車に舌打ちする男性もいた。気にしないけど。

「お前さ」
「んー」

緩やかな坂を少し下ると更にスピードがあがった。
冷たい風の心地よさに目を閉じていると、怜がいつものようにやる気のない声で話しかけてくる。


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mokuji
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