010

「あ。そうだ。もう1コだけ」

早く早くと出入り口で手招きする真南に急かされながら歩き出す。
不意に、真生が耳打ちしてきた。

「黒猫の城多には気をつけた方がいいよ」

聞き知った名前にびくりと肩が跳ねる。
数回目を瞬かせていると、真生が苦笑した。

「危険なのは黒瀧より城多のほうってこと。引っかかれても知らないよ、とは言えない俺の立場もわかってほしいな」

なんだそれは。
言い返そうとしたが、真生はいつものように人のいい顔でにこりと笑い、真南に平謝りしながら先を歩く。

「雪姫ちゃんを保健室まで抱きかかえてったの、城多だよ」
「へっ?」
「真南が騒いでアイツに喧嘩売ったって聞いてさ、三年くらい寿命縮んだ」

「しー」。
真南に聞こえないよう黙らせるために、真生の手が私の口を塞ぐ。
唇に触れる手のひら。
頬に触れる指は、少し冷たい。

「っ、んー!」

わたわた不格好に暴れれば難なく逃れられた。
ドアを開けて待っていた真南はというと、機嫌悪そうにしかめ面で唸っている。

「ちょっとー、何あたしの断りなくユキ姫とイチャついてんの」
「え、断りなんかいるの?」
「いる!」
「いやー…あはは、何勝手に決めてんのかなマナさん」

一応断っておくけれども。
私は誰のものでもない。

萩谷兄妹に挟まれながら、私は大袈裟な溜め息をつく。

それから、ちょうど入れ違いに入ってきたカップルを先に通し、私たちはファーストフード店を後にした。

この後、2時限分の授業のために学校に戻るのだが。

「わざわざ戻るんだ?真面目だねマナ」
「姫が真面目なんだよ。ねーねーカラオケ行こうよ。学校戻るとかめんどい」
「じゃあ他の奴ら呼ぶか?どーせみんな暇してるし、ッ!?」

「何か言った?萩谷×2。」

「…ナンデモアリマセン」
「姫ちゃんコェエ…」

これから4時限目が始まるっていうのに、何で「どーせみんな暇してる」のか。
全く。

縮みあがる兄妹を後目に、私は校門へと急いだ。
授業開始時間まであと5分。
急がないとまた遅刻してしまう。




2章fin.
next..wait.



ちまちま進めててスミマセン。
次はゴールデンウイークだー!
真南ちゃんが活躍します(笑)


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mokuji
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