001

《黒猫においでよ。
 歓迎するよ?》


真っ白な頭で何も考えられずにいたからだ。
あの時の自分はおかしかった。
正常な状態ではなかった。

保健室で目覚めた後、真南の口添えもあって早退することになった。
何事も無く、無事に家に帰ったのだ。
今朝自分の部屋の布団で目が覚めたから、全てが夢だったのかもしれない。
けれど背中は痛いし真南からはボールが当たった箇所の具合はいいのかと聞かれたので体育の授業中に打っ倒れたことは事実らしい。
となるとどこからが夢だったのか。
……いや深く考えるのはやめておこう。

クロネコ?シロネコ?
そんなものに関わる気なんて更々無いっつーの。
私はネズミだ。
傍観側なのだ。
野良猫の縄張り争いなど興味は無い。

「…き、」

だいたい、ちゃんちゃらおかしいっていうかなんていうか。
ネコだとかネズミだとか…トムとジェ●ーじゃないんだから。

「…ば……、」

言葉だけ聞く限りではどこぞの子供向けアニメを連想させる。
血を見ることも少なくないこの学校で、そんな可愛らしいイメージとはかけ離れている気はするが。

「灰葉雪姫!」
「はいぃいい!」


思考が一気に停止する。
ものすごい怒声に大きく返事をすれば、教卓を椅子代わりに教師あるまじき格好で出席簿をつける男性教諭が私を見下ろしていた。

「おーよしよし。現実に帰ってこれたな」

むすっとした顔が一気に笑みに変わる。

「つーか、いるなら返事しなさいよ。お前まで染まっちまったのかって泣きそうだよせんせーは。次、萩谷真南」
「は−い」

丸だか点だか知らないが、出席にはしてもらえたのだろう。
やれやれと座りなおす私の隣で真南がクスクス笑った。
周りからもちらほら笑いが起こっている。

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mokuji
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