008

入学式早々、一人絡まれていた所を真南に助けられて以来、自然に二人で行動するようにはなったが真南には本当に感謝している。
考えなしの、色んな意味で欲望に忠実な男子ばかりが巣くう校内は危険極まりない。
女が一人で行動するべきじゃないことは、身をもって理解している。

「正直、不良に向かってキャアキャア騒ぐ意味がわかんない」

私はクラスの女子の中でも行動力のありそうなグループを顎でしゃくった。
相変わらず先輩やらクラスの目立つ男子やらの話で盛り上がっているようだ。

「そういう意味でも未だバカにしか出会ったことないな」

今朝会った黒猫の幹部…どこかの温泉みたいな名前をした男も同じだ。
ろくなことをしない奴に違いない。

(あ…朝のこと、話したほうがいいかな)

一瞬、真南に話そうかとも思ったがいらぬ心配をかけるだけだろう。
結果的に何もされなかった。
今後関わらなければ良いだけの話だ。
相手もそう忠告していた。

「あ。でも、真南は別だよ。小狡いとこも大いに見習ってるから」

そう付け足して、ニヤリと笑ってやる。
城多という男についても記憶から消すことにした。
三年間、ネズミとして慎ましい学校生活を送るつもりでいる私には関係の無い話だ。

「いやー私は学校生活に慣れたかって聞いただけなんだけど」
「おなじことじゃない」

キッツイね。
真南は苦笑してから どかっと行儀悪く足を伸ばして長座した。

小柄な彼女は、何をしても可愛らしい。
存在だけで癒される小動物のよう……外見だけは。
こういうタイプは怒らせたら怖い。人づてに聞いた話だが、キレた彼女には兄ですら手を焼くらしい。

「真生(まき)兄だけは除外してあげてよね。うちのお兄ちゃん、頭は良いんだから」
「学年5位だっけ?」
「2年になったし、トップ狙うって頑張ってるよ」

真南の兄・真生。
頭脳明晰、ルックスも悪くない。



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mokuji
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