007

3・4限の体育。授業内容は真南が言っていた通りバスケだった。
倉庫側は女子でステージ側は男子。
いつものように男女別で行う。
ネットで区切られた反対側へとぞろぞろ連れ立って歩く男子の中に、「こーちゃん」含む4人は居なかった。
サボリだろうか。不真面目なことだ。

「うわ。もう試合してる」
「男子は元気だねー」

不意に騒がしくなったのに気づいて真南と共に男子側のコートへ目を向ける。
何やらもう試合が開始されていた。

「あ、あの子昨日白猫に入った子だ。もう黒猫に寝返ってる。…名前何だったかなぁ」
「詳しいね」
「うん。「躾係」呼ばないといけないよ〜面倒臭いなぁ」

何の係だって?思っても聞き返す勇気はない。
その可愛らしい笑顔で物騒なことを口にされかねない。
それにしても真南の情報網はどうなっているのだろう。

いきなり始まった試合は、見たところ黒猫派と白猫派に分かれているようだ。
アホの集まりなので当然といえば当然だが、こんな所でも張り合いたいらしい。
色分けなどしなくても雰囲気を見ればわかる。考えなしの単純バカ(黒猫)と、少しは考えるバカ(白猫)。
どっちにしてもバカなことに変わりはないが。

「あたしあの短髪メガネ君が可愛いと思うんだよね。バカみたいで」
「あぁ、いっつもバカ騒ぎしてる奴ね」
「ゆっこは?」
「もち白猫のヘッドの藤後先輩〜。幹部にも格好良い人いるけど後は興味ない。一年なんか論外」

男子は勝手にゲームを始めていたが、女子(私を合わせて12名)は怪我をしたくないのでウォーミングアップがてらキャッチの練習。
真南と組んでボールをバウンドさせたり投げたり…ふざけたり。
すぐ隣には3人グループの女の子たちが男子の話で盛り上がっていた。

早々に戦線離脱して端に座り込んでいる生徒の傍ら、勢力別に試合を行う真面目(?)な生徒。
試合とはいっても初めから本来のルールを無視した「喧嘩」だ。
最終的には殴り合いの喧嘩になることは目に見えているのだが、教師は止めることなく審判役に徹している。
むしろ喧嘩を煽っている。
元ヤンキーとはいえ教師なのだが。楽しんでいるようにしか見えない。

(男の子って…何ですぐ喧嘩するんだろ)

男と限定するのはきちんとした人に失礼だが、あまり良い思い出が無い此方としては偏見を持たずにはいられない。
私の父親はその点普通だが、例外ではないと思う。
頑固で短気。思い通りにならないと機嫌が悪くなる。
大人になろうが、年を重ねようが成熟しきれていない。
要は子供なのだ。男という生き物は。

「飽きた」
「ん。ちょっと休憩しよっか」

授業開始数分でやる気なく座り込んでいる私が言える立場ではないのだけれど。
不意に私に付き合って座り込んだわけではない。
友人も、口には出さずとも全身で退屈を訴えていた。

体育は嫌いではない。
けれどこのまとまりのない気だるい空気がそうさせる。
これを染まったというのだろうか。
随分と不真面目になったものだ、私も。

「もう1ヶ月経つけど…雪姫ちゃんは学校慣れた?」

非常用ボタン近くの壁に寄りかかり、座ったままキャッチボール。
真南からの何気ない質問に、私は少しだけ首を捻った。

「バカな男ばっかりだって思ってるよ」

そして結論。
バカばかり。

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mokuji
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