001

2,霹靂


レインは、魔術庁の門の前まで来ると足を止めた。
門は固く閉じられて、行く手を阻まんと聳えている。
門番の姿はない。この場にいるのは、レインと彼女を呼びに来た魔術師だけだった。
レインは、門を見上げる。
この門に門番は必要がない。魔術で管理されているので、エスタリアが作ったという鍵さえ知っていれば門は開く。
魔術師が左右の門の間に手を付くと、静かに詠唱する。
【風のセレーア、炎のナギル、大地のウォルト、水のアクト、光のランス】
スッ、と手を滑らすと、門が重い音を立てて開いた。
「…昔と同じなのですね。詠唱は」
レインは、懐かしそうに言った。
それに対し、魔術師は不思議そうな顔をする。
「ご存知だったのですか?鍵を」
「ええ。昔、身内がここに勤めていましたので、その時に」
正確には、今も、だ。
ここまで案内をしてくれた彼は、まだ年若い故に知らないのも無理はない。
自分と同世代か、上の世代ならば知っている関係を。
長官であるライルとは、親戚であり兄妹のように育った。幼い頃に両親を亡くした彼女を、邸に留守番させるのは可哀想だと、よくここに連れてきてくれた。
あの頃は喜んで行った魔術庁も、エスタリアが亡くなってからは近寄らなくなってしまった。
「先へ進みましょう。ライル長官をお待たせしていますので」
レインはしっかりとした足取りで中に入っていった。


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mokuji
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