004
《エスタリア様、久しぶり!五十年ぶりだっけ?ライルに頼まれたからね。全力で姫を守ります》
可愛らしい声がしたかと思うと、目の前に十歳くらいのツインテールの女の子がいた。
全体的に白い!そしてもふもふ!
可愛いっ!
『…成長したな、アーク。まさか人型を取れると思わなんだ。それに結界術も腕を上げたか?』
《偉いでしょ?ライル凄い厳しかったよー。あ、ライルとレイン、会いたがってたよ》
首を傾げながらエスタリア様を見上げる。
「可愛い!アーク」
エレーナが頭をわしゃわしゃすると、きゃーっといって笑う。
『……レインが?』
エスタリア様は、私たちのじゃれあいなど目に入っていないのか、視線を遠くに投げて、呟いた。
彼女は意図してないのだろうが、その声には悲哀の色が混じっていた。
「…エスタリア様?」
『いや、何でもない。用件は以上だ。疲れているだろう、眠るとよい。後一刻もすれば、ラディアが飛んでこよう』
「あ、まっ――」
声をかければ、様子のおかしかったエスタリア様は、ふっ、と笑むと私の制止の言葉など聞かず寝るように促して、来たときと同じように音もなく姿を消した。
色々と聞きたいことがあったのだけど。
そんな私の心の声を代弁するかのように、アークが話し始めた。
《…エスタリア様、夢渡りができるんだけど、レインとライルのところにはわざと渡らないの》
「わざと?」
《そうだよ。あの姉妹が不仲だったのは知ってるよね?レイン自ら話していたし。彼女は今もレインに嫌われていると思っているし、許されない事をしたから当然の報いだと考えている。だから現れない》
「許されないこと…?」
《うん。エスタリア様の一番の宝物にして弱点はね、レインなんだ。大切な妹だからこそ魔術師になって欲しくなくて、ナディールや自分から遠ざけた。だけど、エスタリア様は勝手にレインを結界の一つとして使った》
だからだよ、とアークは眉を下げて言う。
一体、どういうこと…?
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mokuji
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