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クリスマス企画
運命の螺旋 番外編






再びあの人の妹として、この世界に生まれ落ちたのだから、前世のような結末だけは絶対迎えない――否、迎えさせません。

前世のように魔術だとか魔族といった類のものは一切関係ない、ヒトの世界に転生しました。前世の記憶があるのは私だけのようです。

そんな私、レインと前世で縁があった人たちとの日常を紹介いたします。


「お嬢様、当主がお呼びです」

「お姉様が?分かりました、すぐ行くわ」

私のお姉様、エスタリアは齢23にして大財閥の総裁に就任している、やり手の実業家です。私が幼い頃に両親は病気で他界、以降、姉が我が家の当主と父の遺した会社を継いで今に至ります。

お姉様は私にとって理想の女性なんですよ!
何故なら、容姿端麗、品行方正、頭脳明晰、家柄優秀であっても自惚れることがないんです。そんな誰もが羨む自慢の姉です!

私が男性だったら、間違いなく惚れているでしょう。

まぁ、そんな男性は全力で潰しにかからせていただきます、えぇ。

お姉様は渡しません!!

シスコン上等!!

…と、お姉様のお部屋の前に着きましたね。

ノックすると、「どうぞ」と声がかかったので、いそいそと入ります。もちろん、可愛いと褒めてくださる笑顔を浮かべて。

「朝早くから呼び出してごめんね、レイン。今しか時間が取れなくて…」

申し訳なさそうにするお姉様。あぁ、そんなお顔をなさらないで。
レインは、喜んでここへ足を運んだのです!

「大した用事ではないのだけど、次の日曜日は空いてる?私も時間取れそうだから、良ければショッピングしない?都合つくかしら?」

お姉様からの外出のお誘い、もちろん断るはずありませんわ。この機会を逃せばお姉様は忙しいので一緒に出歩くなんてできませんもの。

「良いのですか?どうしましょう…今から楽しみです」

まだ週の半ばだというのに、週末が待ちきれません。週末まで気分よく過ごせそうです。しかも、お姉様の笑みがオマケ付き。

笑顔が素敵すぎます…お姉様!!

「私も楽しみにしてる。さぁ、そろそろ高校に行く準備してきなさい。学校、楽しんできてね」

「はい。失礼しますお姉様」




※※※※

学校へ向かう車の中でも顔が緩んでいたのだろう、ルーナ(運転手)から「嬉しいことがあって良かったですね!」と言われてしまった。

「あ、いらっしゃったわよ!おはようございます、レイン様」

「ごきげんよう、皆さん」

お姉様直伝の挨拶の仕方で返せば、まわりにいる生徒たちは顔を赤く染める。「あぁ、今日も麗しい…」「理想の女性だわ」等の声が聞こえるが、私はまだまだですわね。


教室に入れば、見たくない姿が目に入る。

その人物は、我が幼馴染みにしてこの高校の理事長の子息、グレイル。
容姿、家柄、頭脳も優秀と女子にとってはハイスペックな(もちろん、お姉様には及びませんけれど)彼は、ことごとく私の邪魔をしてくる、いわば敵!


「おや、ナディールのお嬢様は朝から人気だな」

「ごきげんよう、グレイル。あなたの笑顔も絶好調のようですわね」

いたって普通の会話に聞こえますが、話している当人たちには次のように聞こえています。

「おや、ナディールのお嬢様は朝から(猫かぶりご苦労)人気だな」


「ごきげんよう、グレイル。あなたの(うさんくさすぎて似合ってない)笑顔も絶好調のようですわね」

表面上はにこやかに装っていますが、裏ではこのように副音声付きで嫌味の応酬が繰り広げられています。

何よりも気にくわないのは、彼がお姉様を好きだということですわ。
私のお姉様ですのに!!

彼は、前世で旦那様でしたがこんな性格ではなかったんです…。
彼は転生するときに、前の性格を捨ててきたに違いありません。


普段ならばここで口論になるのですが、今日は気分が良いので放っておきました。


それから、昼までカリキュラムをこなし、お昼ご飯を親友と食べていると親友から顔の緩みを指摘されてしまいました…。ですけど、お姉様に関係するので素直に答えます。

「レイン、顔緩んでるけど嬉しいことがあったの?って聞くまでもないか」

「さすがエレーナですわね。わかってらっしゃる。今度の週末、誘われましたの!」


「へぇ。珍しいね。あの人時間が空いてるなんて滅多にないからよかったじゃん」

彼女は、にこりと笑うとお手製の卵焼きを食べる。

「《これから、お昼の放送を始めます。今日は特別ゲストをお呼びして、来る学園祭のイベントの企画について説明していただきます》」

学園祭…頭の痛い話題ですわね。生徒会長の私が一番悩むイベントです。

我が校では、生徒会も何か一つ出し物を企画しなければならず、かつ全生徒が楽しめるものが良いのですが…なかなか決まらず、現在に至ります。

 

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mokuji
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