002
「エルガ殿に関する噂は、本当だったのですね」
「噂?」
「はい。彼は数百年を生きているという噂が、前からあったんですよ」
ルーナはエルガが去っていった方を見て、話す。
「誰が見つけたのかわかりませんけど、エルガ殿の二百年前の日記が、書庫で見つかったとか」
「二百年前!?…ってことは、エルガ殿の年齢はそれ以上ということよね?」
それならば彼が相談役なのも頷ける。あの知識量は魔術師や人間の一生で得られるものではない。
ただ、数百年生きるということが一概に良いことだとは言えないと思う。
そのせいで、幾つもの死を見てきたはずだ。そして、今仕えるべき者はこの世からいなくなってしまった。
―――虚しくないのだろうか。
彼の胸の内に思いをはせていれば、後ろから声が掛かる。
「さて、そろそろ神殿に参りましょうか」
エルガがいつも通りの笑みを浮かべ戻ってきていた。
27/33*prev next#
mokuji
しおりを挟む