003

一気に拓けた道に大きく息をもらす。
もうネジは巻き戻ったのだろう、オルゴールは途切れ途切れに音を弾いていた。
中途半端だが、最後の音を弾いたオルゴールがゆっくりと止まる。
湖は静寂に包まれていく。

頼りの音が無くなったことで少し迷いはしたが、少年は畔に建つ小屋の方へ足を向けた。
西と東を分ける湖の渡し舟、浮き輪や鍵を仕舞うためだけの小さな小屋だ。
足早に近づくと、小屋の脇に揺り籠が置いてあった。

ごくり。
喉を鳴らす。

何故、揺り籠がこんな場所に?
人気のない、湖の畔。
何度かこの場所を訪れたがこんなものは置いていなかった。
どう考えても不釣り合いだ。

恐る恐る、中を覗き込む。

「…あ……」

揺り籠の中には、オルゴールらしき小箱が入っていた。
ここまでは、想像通り。
けれど、もう一つには流石に目を疑った。

揺り籠は幼子をあやすために存在する。
中にいるのは決しておかしくはない。
ただ、置かれたこの場所がおかしいのだ。

「あ、有り得ない…」

溜め息が出るのも無理はない。
真っ白いタオルにくるまれて すやすやと眠るのは、生後間もない赤ん坊だった。

「捨て子…」

(ってことだよな?これ…)

門限がどうだとか、シスターは心配しているだろうかとか、考える余裕もない。


揺り籠に揺られて寝息を立てる小さな命に、少年の心臓は極限まで高鳴っていた。




11'09.24. next...//wait/


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mokuji
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