没 べにち

「地球の滅亡って、いつだと思います?」

菊がそう聞いてきたとき、アルフレッドは手元の資料に目を向けていた。その資料の内容は白亜期の地層に多く見られる動植物の化石の一覧で、アルフレッドは菊の質問を理解するのに一拍の空白を必要とした。

「地球の滅亡?」

「ええ、そうです」

アルフレッドは資料から顔を上げ、淡々と手元の図書をめくる菊の横顔をまじまじと見つめた。昼下がりの図書館はざわざわとさざめいているのに、菊の周りだけ音が死んでいるような気がした。

「それって、いわゆる地球温暖化とか、そんなやつかい?」

それとも、マヤとかノストラダムスとか?

質問の意図がわからず、聞き返す。菊は相変わらず文字をたどり、顔を上げない。アルフレッドは手持ち無沙汰に机を人差し指でとんとんと弾いた。

「いえ、もっと科学的な話で。例えば、そう、地球の寿命とか」

そこでフイと菊が面を上げてアルフレッドを見た。しとどの瞳は温度がなく、ガラス玉のようだった。アルフレッドはその視線を受け止め、そして返しながらも眉をひそめて肩をすくめる。言外に何が言いたいのかと問いながら、それでも無視をせず口を開く。

「俺の専攻、忘れたのかい?考古学であって天文学じゃないんだけど」

「ええ、それはもちろん覚えてますよ。…ねぇ、知っていますか。」



2014/08/31 03:21(0)

|

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -