追記

ふたり、無言で床に入った。一番最初、彼ははじめて布団を見て、すごく不思議そうにあれやこれやを言い募っていたのに。今は余計な言葉ひとつ漏らさず、それゆえ衣擦れと濡れた音ばかりが部屋の中をさざめく。ほの暗い行灯の光の中で、みどりの目がきらりとひかって私を射抜く。深い口付け。後頭部へと回った掌が、常より乱雑な仕草で私の髪を乱した。私は両腕をあげて背中へと回す。幾度となくすがった背中はいつのときも変わらず、そのことが私をひどく安心させる。

「…ぁっ」

いつの間にか首筋を辿っていた熱い熱い唇が、少し強めに私の肌を食んで、思わず吐息に色が乗る。いつだってそう。沈黙を破るのは私の声。破らせるのは、罪作りな愛撫。私はたまらなくなって、背中に回していた腕を離す。不満げに上がった瞳の中に私がいるのを確認して、もだえるような快楽への入口で少しばかり無理して笑った。離した腕をくしゃくしゃの栗毛に回し、ぐっと自身へ引き寄せる。近くなった耳元へと、ありったけの色を乗せて息を吐き、そしてかりりと甘く歯をたて食んだ。途端に聞こえる、息の詰まる小さな促音。ふふふと声に出して笑えば、対抗するように左の飾りをきつめに噛まれてびくりと身が震える。くにりくにりと舌先で弄ばれながら、至近距離で感じる吐息で笑われたことを悟ってがばりと相手を引き離す。明るいとは言いがたい行灯の光でもってしても、左の飾りはてらてらと唾液でいやらしく存在を主張し、自身のものだというのに無性に羞恥と情欲とを掻き立てる。その淫猥な光景から目をそらし、目の前の濡れた唇へと舌を這わせた。ぬちゃりと音をさせて歯と歯の間から舌を滑り込ませ、歯列をなぞる。焦らすように煽るように、そればかりを繰り返せば、我慢のきれた舌が私の舌を淫蕩にこすりたてる。両の掌は私を乱すことを先決としたらしく、右手は兆して震える男根へ、左手は尻の割れ目へと這わされる。性器への直接な愛撫は瞬く間に身体を翻弄し、次の行為を匂わせる左手の動きは精神を翻弄する。喉の奥から漏れ出るはしたない声は、つないだ唇によってくぐもって聞こえた。

|

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -