追記

――シャッテンの怪盗、ついに逮捕!
ここ一月の間、街を騒がせていたシャッテンの怪盗が警察によってついに捕らえられた。警察は、ウェルネスター公爵家やデイモンド子爵家から盗み出した品物の行方を追求すると共に、共犯者の有無を探っている最中だと語っている。
シャッテンの怪盗は、先月はじめに、ヨーデル準爵家のKANZASHIと呼ばれる東洋の髪飾りを盗んだことから知られるようになった。その後も東洋の品ばかりを狙い、犯行を続けた。警察の必死の捜査にも引っ掛かることなく、まるで影のようにするりと逃げてしまうことからシャッテンの怪盗と呼ばれるようになったが、それもここまでだったようだ。盗み出した品は12点、総額18,000,000ドルにも及び、また大変貴重な物であるためシャッテンの怪盗は斬首刑になることは間違いないだろう。





「わかってるんですか、あなた」

シャッテンの怪盗の――ギルベルトの視界がくらりと回りかけたところで、頭部を強い衝撃が襲った。ギルベルトの横っ面を蹴り飛ばした看守――菊は、ギルベルトが口腔内に溜まった血を吐き捨てるのを見ると、嫌そうに顔をしかめた。菊のすぐ後ろにいる警察署署長――アルフレッドは、何も言わず、ただ上機嫌に笑っている。アルフレッドの付き添いである警部補――アーサーは、取調室のドアに背中を預けて目を伏せたまま微動だにしなかった。ギルベルトは、地べたから見上げた顔に向かって、こてんと首を傾げる。

「わかってるって、なにが?」

はぁあと息を吐いたアルフレッドが一歩踏み出すより早く、菊の膝がギルベルトの腹に食い込む。ギルベルトは、30分以上前に使わなくなった椅子にぶち当たって倒れた。ごほ、がはッと濡れた音を含んで荒く咳をする。身を丸めてヒュウヒュウと息をしていると、菊がギルベルトの胸ぐらをつかんで上体を無理に起こし、パァンと平手をかます。

「そんな言葉遊びに付き合ってる暇はないんですよ。このまま嬲り殺されたいんですか」

|

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -