追記

幸福とは何なのか。彼の人の幸せが、私の幸せだとはよく言ったもので。想いと想いの瀬戸際で、くらりくらりと酩酊でもしているかのよう。

トロイメライ 3


「起きろってアーサー!」
べちりと音は可愛らしく、だが机にくっついている額にはしっかりとした衝撃を加えたそれは、フランシスがしたらしい。アーサーはがばりと上体を起こし、起き抜けの目付きの悪さそのままにフランシスを睨んで唸る。
「うっせぇんだよ髭」
ねめつけるついでに見えた教室は、人がざわついていて、そこかしこから漂う食べ物のにおいと相まって、今が昼休みなのだと知れた。アーサーはフランシスから目を外し、凝り固まった肩を回してぐっと背伸びをする。フランシスは、そのあまりにあまりな対応にも、顔をしかめるだけで終わった。

「なーによ、お前がうんうん魘されてるから、親切に起こしてやったってのによ」

ぶちぶちとそうごちるフランシスを無視し、アーサーはくるりと教室内を見渡した。数個先の机に座る本田菊。机上に出された弁当箱は、包も解かずの手付かずで、本田菊本人は弁当箱に目もくれずライトノベルの文字に集中しているようだった。

「…ギルちゃん、今日は日直だって言ってたから、少し遅れてるんだと思うよ」

アーサーはちらりとフランシスを見て、そしてがたりと席を立った。フランシスは、形容しがたい表情をしていた。

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