「なぁ本田」 くるくると彼にしては行儀悪く、アーサーがティースプーンで紅茶をかき回しながら口を開いた。白いテーブルの上で肘をつき、頬に当てた左手の人差し指を頬の上でぽんぽんと軽く遊ばせている。そんな態度のアーサーに、菊はアルカイックスマイルと称される笑みで小首をかしげた。 「どうなされました?」 天気もよく、暖房によって温かく保たれている心地の良い室内で、アーサーと菊はお茶をしていた。すぐそこにある窓から外を覗けば、アーサー自慢の薔薇たちが可憐に咲き誇っている。そんな、文句のひとつもつけどころなどないはずのお茶会だと言うのに、アーサーの表情は至極退屈そうで、菊はこっそりと笑った。 「笑うなよ。というか、わかってることをいちいち聞くな」 「あい、すいません。ですが、意識確認は必要だと思いますよ?例えば、そう、どなたにするのか、とか」 すっと口元に手をやり、笑みを隠した菊とは反対に、アーサーはわかりやすく笑みを作った。持ったままだったティースプーンを静かにおろし、あいた右手を肘をついていた左手と合わせて胸元へと引き寄せた。組んだ腕は、とてもわかりやすく思案中だということを菊に教えた。 「そうだな…。最初だからな、景気付けに、reactionの良いやつにするか」 「それならば、アルフレッドさん、フェリシアーノくん、あとはアントーニョさんとかですかね?」 菊は、音を立てず優雅に紅茶を口に含むと、いつもやいのやいのと賑やかな友人達の名を述べた。 「アントーニョは却下だ。好きじゃないし、そもそも気づかねーだろ」 「まぁ、その可能性がなきにしもあらずですね。…なら、アルフレッドさんかフェリシアーノくんで?」 「ここは、アルフレッドにするか。わかりやすいし、あいつはこういうことには寛大だからな」 世界会議二時間前 「goodmorning、菊!」 「あぁ、おはようございます、マシューさん」 「what!?俺はアルフレッドだぞ!」 「おやおや、どうなさったんですか?あなたがそんなご冗談をおっしゃるだなんて」 「NO!なんだい、菊こそボケちゃったんじゃないのかい?」 「なんと、失礼な。まだまだ現役ですよ!…と、アーサーさん、おはようございます」 「あ、アーサー!君からも菊になんか言ってやってよ!」 「どうしたんだ、マシュー?お前が挨拶忘れてそんなこと言うなんて」 「オーマイガッ!」 2013/12/27 21:31(0) |