企画フィマク2 | ナノ



朝からなんとなく気だるさを感じていた。でも学校は楽しいし、部活に行けば、みんなとサッカーが出来る。休みたい要素なんて何処にも無い。でも今思えば、あの時素直に休んでいれば良かった。




ぐらり、と眩暈がした。いきなりの眩暈に立っていられなくなった俺は、受け身もとらずに膝から地面へ崩れ落ちた。口の中に砂の味が広がり、地面に強く打ち付けた頭の奥では、まるで頭の中を大きなトラックが通過していくような大きな音が響く。俺は、焦点の合わない視界で空を見上げた。頭を打ち付けたから、もしかしたら脳震盪を引き起こしているかもしれない、と頭の隅で冷静に考えてみる。

「マーク!大丈夫!?」
「……あ、ああ。」

ちょっと転んだだけだ、と曖昧な笑顔をフィディオに向けて立ち上がろうとすると、足に力が入らないことに気が付いた。一瞬、目の前が真っ暗になって、再び眩暈がした。そのまま膝から崩れ落ちる。ずきずきと痛む頭も、心配そうに覗き込むフィディオも、相変わらず元気な太陽も、真っ暗な意識のなかに飲み込まれて、消えた。



────────




「ん……」


額にひんやりとした何かが押し当てられる感触に、俺は目を覚ました。そんな俺の額に押し当てられているのは、フィディオの手だった。それまで割れるように痛かった頭が、フィディオの手が俺の頭を撫でると、すっと軽くなったような気がした。この手の暖かさはまるで母親のようだと、俺の額に手を置くフィディオを見ながらふと考える。フィディオの手は、小さい頃に俺が熱を出すと、何も言わずに暖かい手で頭を撫でてくれた母の、あの手にそっくりだ。そう思った。


「風邪と軽い脳震盪だってさ。しばらく休んでれば治るはずだよ」
「うん…」
「熱も結構あるから、勝手に動いたりしちゃダメだよ?」
「分かった」


ありがとう、そうお礼が言いたいのに上手く言葉が綴れない。果たしてそれが熱の所為なのかは、今の俺には分からない。そのうち、フィディオは練習に戻ってしまうのだろう。そんなことを考えると、胸が締め付けられるように痛くなった。
ここにいて、ずっと、傍にいて。その一言が言えなくて、意味もなく視界が霞んだ。そんな俺の頬を伝った涙を、フィディオは親指で拭った。そしてそのまま俺の前髪を掻き上げると、額にキスをした。


「大丈夫。何処にも行かないから」
「な、んで……」
「マークが、好きだから」


にこ、と笑みを浮かべたフィディオと視線が絡み合うと、再び眩暈がした。俺は起こしていた上体をベッドに投げ出して、布団を被った。そんな俺の手を握りながら、早く治してね。と呟いたフィディオの手のひらの体温を感じながら、俺は目を閉じた。








眩暈がするほどの幸福

(……ありがとう)









マーク受け企画様に提出させていただきました!遅くなり、申し訳ありませんでした!
この度は、素敵企画様にお誘いしていただき、ありがとうございました!




03.08 野菜


第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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