赤は毎日庭の水やりをしていた。水が出る車は"消防車"。
白はいつも怪我をすると絆創膏をくれた。怪我を心配してくてる車は"救急車"。

そして"黄色"は庭で怪しいことをしていた。地面を掘り起こす車は"工事作業車"。

そう指差された小太りの男は狼狽えた。
土の詰まった爪をサバイバルゲームでのものと言ったが、墓穴を掘った。
さらにその証拠となる、地面を掘り起こした理由が庭に埋まっている。

男は顔面蒼白になり、後ずさったかと思ったら、そのまま逃げ去ろうと走り出した。

誰もが咄嗟に動けず出遅れた。

男の走る先には制服姿の少女が立っていた。
男は"たかが少女"と力任せに除けようと腕を振り上げた。
誰もがその少女にまた新たな傷を作ってしまうと焦った。
だが、少女は顔色変えずにそれをかわした。ただ一歩横に動いただけだったが、全速力で走りながら力を込めて腕を振り下ろした男は力をうまく放出できずよろめく。
つかさず男の足元に、自分の足を滑り込ませる。足元まで見ていない男はそれに躓き、前に倒れた。

倒れた男の顔面真横にガツン、と抱えていた長物の先端を地面に叩きつけ、少女は男を睨みつけ、静かに言葉を発した。


「往生際悪いですね。それっぽっちの怪我で済んだんだから大人しくしたらどうです?」


そこで男は警察に取り押さえられることになる。


ここで"木馬荘"放火事件は一件落着となった。
だが残った謎が二つ。
"クロシロ"くんと"灰色"の人。
事件に関わっていなかったものの誰も答えがわからないでいた。


「"クロシロ"はパトカー。警察顔負けのボウズのあだ名には打ってつけってわけだ。」

「"灰色"の人はあのお姉さん。きっと今みたいに何かを持ったり運んだりしてることが多かったんだよ。たくさん荷物を運べる車は宅配便とかの"運送車両"。きっと開人くんの持ってるトラックの色が灰色だったんだよ。日記にも、お父さんと“灰色”の人と一緒にお手伝いをしたって書いてあったし。」


「お姉さん、開人くんと仲良しなの?」


少年探偵団の問いに怪我をした少女を見た。


「そりゃ、開人くんが生まれる前からここにいるからね。よく一緒に遊んでたよ。...それに長くここでお世話になってたし開人くんのお父さんのお手伝いもよくしてた。でもまさか影でそんなあだ名付けられてたなんて思いもしなかった!」


少女は顔の怪我とは反対の笑みを浮かべ答えた。
すると少年探偵団はこう提案するのだった。


「じゃあお姉さんも一緒に開人くんのお見舞いに行きましょう!」

「仲良しのお姉さんが行ったらきっと開人くんも喜ぶよ!」

「遠いから博士の車で連れてってもらおうぜ!」


「...博士。君たちの知り合いに博士がいるのかい?」


答えたのは少女ではなく、その隣人だった。

少女自身、この隣人とは円滑な関係を築いていたと自負している。
隣人が越してくるずっと前から一人暮らしをしていたが、その中でも一番気にかけてくれたいい隣人だ。
その隣人が、いつもの人好きそうな笑顔とは言い難い何か含みのある笑顔を見て、嫌な予感がした。


その後、隣人の白々しさに頭を抱え、強引さに更に悩みを増やすことを、この時点では予想すらしていなかったのは別の話である。


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