うちの最年少であるナマエは、とにかく欲しがらない子だ。

海賊と言ったら欲しいものはどんな手を使ってでも手に入れる、といった傲慢な偏見を持つが、どうもナマエには当てはまらい。
前に彼女の誕生日の話が上がったとき本人に欲しいものはないかって聞いたことがあったが、


「もう欲しいものは持ってるからなにもないよ!」


なんて満面の笑みで返された。

いつだったか、どこかの島のどこかの街で、ナマエの背中を見つけたことがあった。
いつも船長とセットのイメージがあって一人でいるなんて珍しいなんて思い声をかけようとした。

だがその瞳の先にあるものに気付いて足がすくんでしまった。

絵に描いたような"家族"だった。

ナマエは船長が育てたと言っても過言ではない子だった。
一回りも年が違うからナマエにとって船長がすべてだった。親であり兄弟であり友達であり、それ以上の存在だった。

しかしその中にいつも"家族"はいなかった。

彼女本人も船長に育てられた経歴を持っているから"家族"という概念なんて最初からないと思っていたが、大きな勘違いだったようだ。
だって目の前の彼女の背中を見ているだけでその気持ちが伝わってきそうだったから。

文字通り手も足も、ついでに言葉も出ない自分を誰かが横切った。

船長だ。

そのまま彼女のそばまで行きと立ち尽くしていたその肩をいつものように抱き寄せた。
船長を見上げたナマエの瞳も、いつものように輝いていた。

ここで認識を改める必要がある。
彼女ナマエは欲しがらないのではなく、無い物ねだりをしない、誰よりも現実を理解している子だ。

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