「ローっ!」


今一番会いたい人を見つけて瞳を輝かせた。

一人の少女が向こうから走ってくる。
名を呼ばれたであろう男は足を止め振り返った。

それが嬉しくてまたいっそう瞳を輝かせた。

男は身の丈以上の刀を担ぎ、もう片方の空いた手を広げこちらに飛び込んでくる少女を受け止めた。
少女の身の丈は男の腰ほど。
男にとって飛び込んでくる少女を受け止めることなど日常茶飯事だった。

いつものように受け止められた嬉しさと安心間で男に思い切り抱きついた。


「なんだナマエ、今度は何をやらかすたんだ?」


顔を上げればいつもの悪いことを考えてそうに笑う男がいた。

男自身、少女が自ら進んで首を突っ込むことをしないことは知っている。
しかし昔から面倒ごとに巻き込まれる体質だった。
その後処理をするのはいつも決まって男だった。

男の不本意な言葉に瞳の輝きはしかめっ面で霞んでしまう。


「私何もしないよ!ローはいつもいじわるばかり言う!」

「意地悪も何も、本当のことだ。今日は何も持ってきてないだろうな。」


霞んだ輝きを見た男は少女の頭を乱暴に撫でた。
そうすればその輝きが少し元に戻ることも知っている。
男は少女のその瞳の輝きを見るのが好きだった。

少女も頭に乗せられた男の手が好きだった。

その手はこの世で一番信用できる男の手だから。

すると少女が跳ねるように顔を上げて辺りを見渡し始めた。
男もそれに気付き少女から手を離し、一歩後ろに下がった。
そして小さく息を吐いた。


「...もうお前、一生俺のそばから離れるな...」

「ローがそれでいいなら、それでいいよ」

「バカ。いいから言ってるんだろうが。」


男が担いでいた刀を下ろした。

だんだん近づいてくる轟音。遠くに見える砂埃。一緒に聞こえてくる怒声。

少女の瞳の輝きが変わる。
失われることなく、明度を増していく。
例えば獲物を見つけた、極寒の地に生息する雪の色をした捕食者のよう。


「私、ローと一緒なら、なんでもするよ!」


少女は振り向き男に笑った。

その直後、こちらに向かっていたはずの砂埃が止まり、大量の砂が舞い上がった。
前にいたはずの少女はもういない。

轟音怒声もすべて聞こえなくなっていた。
舞い上がる砂の中から出てきたのは、白い毛を纏った少女だった。

瞳の輝きは失われることなく男を見て確かに笑っていた。

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