その事態は彼女が居ぬ間に起きていた。
面喰ったのも無理はない。だって誰にも知られているはずのない基地に人間がいたのだから。しかも子ども、三人も。
「名前、ご苦労さま」
声をかけてくれたのは同性のアーシー。その声を聞いた謎の子どもたちはこちらに目を向ける。一人の子は目を輝かせていた。
「ねぇねぇそのバイザー超イかしてるわね!どこで買ったの?!」
「...これ?これはラチェットがつけてくれたんだけど、どこで手に入れたかは私にもわからないわ...」
「ミコ、だいたい彼らのものがここで買えるわけないだろ?」
目の前のトランスフォーマーが装備している青いバイザーを指さすのが女の子、それをなだめるのが男の子、それと興味を持ってトランスフォーマーを見上げるもう一人の男の子、この子は前の二人よりも幼い。
「君も彼らの仲間なの?」
「仲間...。...彼らがそう言ってくれるなら、ね」
見上げてくる男の子は彼女にそう尋ねる。問われた彼女はバイザーの奥で目を泳がせる。彼らにそれは悟られない、青いバイザーが隠してくれるから。
するとアーシーが彼女のもとまでやってくる。そして穏やかな笑みを見せた。
「そう、この子は仲間よ。名前は名前、仲良くしてあげてね」
「名前っていうのね!私はミコ!」
「僕はジャック、よろしく名前」
「僕はラフだよ、よろしくね」
「...うん、よろしくお願いします」
未だ緊張しているのか彼女の視線は下を向いたまま。子どもたちが下から見上げても見えるのは青いバイザーのみ。
「彼女、恥ずかしがり屋なのよ。でも仲良くなりたいって思ってるから安心して」
アーシーはそう言って彼女をからかうが本人としてはそれどころではないのが本音。そしてとうとう我慢が出来なくなったのか、からかうアーシーを振り切り子どもたちの頭上を飛びながら変形した赤い車は基地の奥地へと走り去っていってしまった。
初めて出逢ったその瞬間
しばらくすると基地の奥の方からガシャン!と何かが何かにぶつかる音が。その直後ガラガラガラと何かが崩れる音がした。
はぁ、とぶつかって崩れたものを直す張本人のため息が聞こえた。